研究課題/領域番号 |
18H01592
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大風 翼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40709739)
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研究分担者 |
大宮 哲 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 研究員 (60718451)
新屋 啓文 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (80794982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 吹雪境界層 / ラージ・エディ・シミュレーション / 吹雪風洞実験 / 野外観測 / 吹きだまり / 数値流体解析 / 瞬間最大値 / スプラッシュ |
研究実績の概要 |
1)吹雪風洞実験:防災科学技術研究所の新庄雪氷環境実験所の低温風洞を用いて、吹雪風洞実験を実施した。地吹雪を十分に発達させた地点において、ハイスピードカメラを用いて撮影した。撮影条件は2018年度の実験を参考に決定した。Particle Tracking Velocimetry(PTV)により、雪面への衝突粒子、衝突後のRebound粒子、はじき出されたSplash粒子の挙動を取得し、Splash過程のサブモデルのための各種統計量の算出を試みた。 2)吹雪境界層を対象とした野外観測:北海道弟子屈町の雪原において、吹雪境界層を対象とした野外観測を実施した。3次元超音波風速計とSnow Particle Counterを4高度に設置し、地吹雪発生時の流れ場の乱流統計量及び粒子質量流量の高度分布を取得した。設置高度やサンプリングレートは2018年度の予備実験を元に決定した。降雪の弱い条件下の地吹雪では、目線高さの単位時間に単位面積を通過する雪の質量流量(飛雪流量)の最大瞬間値が10分間平均値の関数で表現できることを見出したほか、降雪時の飛雪流量の鉛直分布の特性について考察を加えた。 3)吹きだまりの予備観測:2)の測定地点近傍に、模擬フェンスを卓越風向に直交するように設置し、吹雪ある1イベントについて、フェンス周辺に形成される吹きだまり形状の把握を行い、2020年に実施する2次元構造物周辺の吹きだまり観測のための基礎的データを収集した。開口率0 %では、既往の観測と概ね相似な吹きだまり形状がフェンス風上に形成された。 4)飛雪モデルのプロトタイプの検証:2018、2019年に実施した低温風洞実験を対象とした解析を行い、モデルの予測精度の検証を行った。雪面からの粒子射出に係るSplash過程のサブモデルにより、雪面近傍の跳躍層をより高精度に再現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響により2020年2月から3月に実施予定だった野外の集中観測を中止したため。2020年度も集中観測を予定しているが、遠隔でデータ収録を行うなど、工夫をする予定である。吹雪風洞実験や飛雪モデルの開発は、概ね予定通り進行し、論文執筆も進めていることから、「(3)やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)吹雪境界層を対象とした野外観測:2020年2月3月に実施予定であった吹雪境界層を対象とした野外観測(2019年度は、COVID-19の影響で中止)を実施する。Snow Particle Counterによる出力を高速サンプリングし、乱流構造と飛雪流量の変動の関係について分析を行うほか、飛雪モデルの検証データとして活用する。観測は2019年度に引き続き、北海道弟子屈町の雪原を予定している。 2)吹きだまり観測:北海道弟子屈町の1)の測定地点近傍に、模擬フェンスを卓越風向に直交するように設置し、フェンス周辺に形成される吹きだまり形状の把握を行う。フェンス高さは1 m、開口率は0%とし、フェンス幅は2次元性を仮定し、6 m程度を予定している。ある地吹雪の1イベントでの吹きだまりの成長過程を観察するほか、1週間程度の複数イベントで形成される吹きだまり形状を、UAV(ドローン)を用いた空撮画像から、画像解析により推定する。 3)飛雪モデルのプロトタイプの検証:前年度までに引き続き、風洞実験を対象とした再現解析を実施し、雪面近傍の乱流構造と雪の飛散の関係について分析を加える。さらに、十分に発達した吹雪境界層の再現解析を行い、1)の野外観測結果との比較から、モデル実スケールでの予測精度を検証する。さらに、飛雪流量の最大瞬間値をもたらす際の雪面近傍の乱流構造の特徴について分析し、野外観測において、飛雪流量の最大瞬間値が平均値の関数で表現できたメカニズムについて考察を加える。また、これらの解析を通して、次年度実施する構造物周辺の吹きだまり解析の流入境界条件を得るために、主流方向に直交する断面で時系列データを取得し、保管する。
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