研究課題/領域番号 |
18H01600
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
倉渕 隆 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (70178094)
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研究分担者 |
鳥海 吉弘 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (90649162)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トレーサガス実験 / 空気齢 / 定常濃度分布 / 動的定常濃度 / 漏気 / CFD |
研究実績の概要 |
本研究は,循環系に実現される動的定常濃度を合成することによって,等価な開放系における定常濃度分布を予測する測定手法のプロトコルを開発することを最終的な目的としており,特に漏気を伴う現実空間を測定対象とした場合に,漏気がどの程度誤差要因になるかについての詳細な検討の実施を計画している。このためには,漏気量が無視できる状態から,一定レベルまでコントロール可能な空調実験室が必要であり,本年度は既存の空調実験室をこの目的に適用できるように機能追加を行うことから着手した。予算上の制約があるため,漏気系への温度調整機能の追加は断念せざるを得なかったが,メインの空調系については任意に温度調整が可能な実験施設の回収が予定通り完了した。次に,測定に必要となる高応答性CO2濃度測定機器については,㈱コーナー札幌にSenceAir社の濃度センサーとアクティブサンプリングポンプを組み合わせた試作品を製作頂き,ステップアップ,ステップダウン・トレーサガス実験によって応答性能を評価した結果,10秒程度と予想通りの高応答性能であることを確認した。次のステップとして,漏気が循環換気量による換気回数の1/100以下を満たす条件について,開放系の濃度の循環系における動的定常濃度の合成による予測と,トレーサガス供給を循環部にて行う空気齢予測を実施し,対応する開放系における実験結果及びCFD予測結果と比較した。その結果,動的定常濃度による予測結果は開放系における測定結果やCFD計算結果と良好に対応することが確認できた。また,濃度測定機器の高応答性という特性を生かし,時定数が短く従来トレーサガス実験が困難とされてきた通風室内における空気齢測定に適用可能であることを確認した。以上の成果については,取りまとめて発表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の実験的検討を実施するために試みた既存の実験室の機能追加は予定通り年度内に完了した。また,CO2濃度の高応答性測定機器も十分な応答性能を発揮し,研究初年度中に20セットの納入が完了した。しかし,サンプリングポンプの耐久性能に関する不安から,業者が新規に濃度測定機器を製作することに難色を示すという不測の事態が生じた。従って,今回試作した濃度測定機器は濃度変化が急激で高応答性機器が必須の局面でのみ使用を限定することとし,その一方で,市販のCO2濃度測定機器の応答性能向上のための試験を追加実施することとした。現状ではパッシブサンプル方式を採用している既存の測定器での応答性能約1分を,アクティブサンプル方式とすることによって,30秒程度に短縮できる見込みが立ちつつあり,2019年度は試作機と既存濃度測定機器の応答性改修を計った機器を適所に使用して検討を進める予定である。濃度測定機器の性能から通風気流の空気齢測定を試みることができ,また,漏気の無視できる環境下での空気清浄機による空気齢と汚染空気濃度分布測定のトライアルまで実施することができたことから,研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
高応答性濃度測定機器の追加整備が困難となったことから,2018年度後半に着手した既存の濃度測定機器の応答性の改善対策を検討し,非定常濃度測定を合理的に実施できる測定システムの構築を第一に実施する。その後,漏気が循環換気量に対する換気回数の1割から2割5分程度の範囲の条件においても動的定常濃度の合成により,対応する開放系の濃度分布が適切に再現できるか,CFDによる検証と平行して検討する。また,漏気がある場合の空気齢測定は,実験開始直後の動的定常濃度を用いる必要があるが,どの程度の時間データまでは使用できるかなどの課題があり,これについても,CFDによる検証を並行して実施しつつ,実験的検証を試みる予定である。さらに,当面は漏気のない条件に限定して,浮力の作用する流れ間における応用に着手したい。
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