研究課題/領域番号 |
18H01602
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋野 公宏 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30391600)
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研究分担者 |
李 廷秀 東京医療保健大学, 医療保健学研究科, 教授 (60292728)
石井 儀光 国土技術政策総合研究所, 都市研究部, 室長 (80356021)
野原 卓 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (10361528)
花里 真道 千葉大学, 予防医学センター, 准教授 (00608656)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歩行 / 身体活動 / 都市環境 / ウォーカビリティ / まちづくり |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、大規模集団の長期間に渡る歩数記録データを用いて、都市環境における歩行の促進・阻害要因とその影響を明らかにすることである。2020年度(および繰越期間)も過年度に引き続き、地域の事情に精通する横浜市職員(健康福祉局、道路局)と意見交換しながら、横浜市「よこはまウォーキングポイント事業」のデータを用いた研究を行い6篇の査読論文を発表した(累計9篇)。例えば、横浜市が整備した遊歩道周辺に居住する高齢女性は加齢に伴う歩数減少が抑制されていたこと(宮川・樋野、2020)、人口密度の低い地域に住む人は高い地域と比べて歩数が少なく3年後にその差が拡大したこと(Hino et al., 2020)、公園の近くに居住する高齢女性はCOVID-19の緊急事態宣言中も歩数減少が抑制されていたこと(Hino & Asami, 2021)などを明らかにした。本研究のように大規模かつ長期間の歩数データを用いた研究は国内外に類が無く、国際的な学術発展に貢献することが期待される。 本研究の第二の目的は、地区の定量的な「Walkability(歩きやすさ)指標」と、自治体や開発事業者向けの「健康まちづくりデザインガイド」から成る「健康まちづくり支援ツール」の開発である。前者は東京大学空間情報科学研究センターが2020年7月に類似指標を開発したことから、上述した大規模歩数データを用いてその指標の検証研究を行った(Hino, et al, 2022)。後者ついては、”Design”, “Diversity”など6のカテゴリーの下に34のキーワードを整理し、7つの事例と関連づけて健康まちづくりの考え方や手法を紹介する「身体活動を促すまちづくりデザインガイド」を作成、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の第一の目的として掲げた歩行の促進・阻害要因の分析について、大規模集団の長期間に渡る歩数記録データを用いて9篇の査読論文を発表(うち5篇は国際誌)するなど、多数の研究発表を行った。1年の研究期間を残して、都市環境における歩行の促進・阻害要因を解明するという当初の目的を達成したと考える。 第二の目的は、地区の定量的な「Walkability(歩きやすさ)指標」と、自治体や開発事業者向けの「健康まちづくりデザインガイド」の開発であった。前者は東京大学空間情報科学研究センターが2020年7月に類似指標を開発したことから、上述した大規模歩数データを用いてその指標の検証研究を行い、査読論文として発表した。後者は、2020年度に予定していた海外調査をCOVID-19の影響で実施できなかったが、国内の事例や文献の調査を中心にとりまとめた「身体活動を促すまちづくりデザインガイド」を2022年2月に公表した。こちらも、1年の研究期間を残して当初の目的をほぼ達成した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、「健康まちづくり支援ツール」の一つとして作成した「健康まちづくりデザインガイド」を、ウェブサイトの充実や一般向けの講演等を通じて普及させる。また、過年度に実現できなかった海外調査を行って事例研究部分の充実を図る(第二版に反映)。横浜市が保有する大規模・長期間の歩数データを用いた分析については、前年度までに当初の目的を十分に達成したと考えるが、市との協定に基づき引き続き分析を行いつつ、研究成果を国内外に普及させる。
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