研究課題/領域番号 |
18H01605
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
恒川 和久 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50283396)
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研究分担者 |
太幡 英亮 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00453366)
村上 心 椙山女学園大学, 生活科学部, 教授 (10247603)
中井 孝幸 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10252339)
大月 淳 三重大学, 工学研究科, 准教授 (20293673)
川野 紀江 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (30247605)
生田 京子 名城大学, 理工学部, 教授 (70420370)
納村 信之 名古屋商科大学, 経営学部, 教授 (90553131)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公共施設 / ファシリティマネジメント / 利用者アクティビティ / 施設キャパシティ / アクセシビリティ / 公共施設再編 / GIS |
研究実績の概要 |
平成30年度は、以下に示す本研究の3つの目的それぞれについて調査・分析を進めた。 ① 各自治体における経時的な公共施設整備の状況を明らかにし、人口動向や財政状況と合わせ類型化したうえで、身の丈にあった公共施設ストックの将来モデルを策定する。→愛知県内全54自治体を対象とした公共施設集中整備期からみる自治体の類型化を行った。 ② 複数の自治体からなる広域の地域において、住民の公共施設における利用者アクティビティごとの住民のアクセシビリティと受容する施設のキャパシティの観点から、複数自治体が相互補完する施設再配置のシミュレーションを行う。→東三河広域連合を結んでいる5自治体を対象として、アクセシビリティ比較に基づく公共施設の施設用途・自治体横断的な適正再配置手法に関する分析を行った。 ③ シミュレーションの結果と各自治体の状況からライフサイクルコストが小さく、住民の満足を得られる広域的・横断的な施設再編のマネジメント手法を構築する。→奈良県御杖村を対象に過疎地域の公共施設再編における住民と行政の管理・運営に関する実態調査を行った。 また、東京都千代田区、宮城県多賀城市といった国内自治体、及び、フィンランドの自治体や政府機関における、先進的な公共施設の整備や運営の方法の視察調査を行い、その手法や効果について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で掲げる3つの目的に対して、それぞれ下記の通り順調に進捗している。 ① 各自治体の特性と公共施設整備状況による公共施設ストックの将来モデル策定では、愛知県内の全54自治体を対象に、戦後の公共施設ストックについて施設種別ごとの整備状況の数量的な把握を行った。各自治体の特性を示す人口の状況や財政状況を示す統計的なデータをあわせ、多変量解析により整備状況の類型化を行った。類型化で得られた各タイプを代表する自治体において、設置に関わる準拠法令や国の政策、財政的、地理的状況をあわせ分析することにより、各自治体に共通する整備の背景や要因を明らかにした。 ②アクセシビリティ比較に基づく公共施設の適正再配置手法に関する分析では、住民の活動機会を計測する指標としてアクセシビリティを用いることで、利用者視点での公共施設の施設用途・自治体横断的な適正再配置手法を提案した。東三河広域連合を結んでいる5自治体を対象として、パーソントリップ調査を元に生活圏域を明らかにし、GISを用いて各地域から対象となる公共施設へのアクセシビリティ及び将来シナリオ比較に用いる減衰パラメータを算出した。そのうえで将来シナリオを比較することで施設の適正配置のあり方を示した。 ③過疎地域の公共施設再編に関する実態調査では、厳しい財政状況に直面し、都市部での公共施設再編方法と同じ方法をとることは難しい過疎地域において、住民の生活実態とニーズをインタビュー調査からの細かな視点を取り入れて考察することにより、住民と行政の双方の視点による過疎地域での公共施設再編の方法を提案した。過疎化の進む奈良県御杖村におけるインタビュー調査から、住民にとって重要な公共施設を抽出し、これをふまえた公共施設再編方法を示し、財政支出をできるだけ抑えながらも、住民のニーズに応える再編の方法について提案することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでの研究成果をふまえ、人口密度や構成・財政状況など地域特性の異なる以下の2地区を対象とし、無作為抽出による住民アンケート調査(各地区各5000部計1万部配布)により、施設での活動内容、人数、アクセス手段や時間といった利用者アクティビティの実態を把握する。 a.名古屋東部尾張地区(長久手市・日進市・みよし市・豊明市・東郷町):広域行政に関する連携協定を締結済みであり、名古屋市に隣接する人口が増加している小都市群 b.愛知県東三河地区(豊橋市・豊川市・蒲郡市・田原市・新城市):中核市を中心とする連携中枢都市圏に相当する都市群 アンケート結果に基づく各地区でのアクティビティごとの圏域と、研究分担者による施設種別ごとの利用圏域研究の知見を統合化し、広域都市圏、および、地域生活圏における施設種別を超えた複数自治体で相互補完し、アクセシビリティを最適化する地域施設再配置について、GISを用いたシミュレーションを行う。 人口規模が小さく財政的に厳しい自治体ほど、民間の力を活用した新たな整備手法の採用には消極的であり、柔軟な公共施設マネジメントを実践することが困難な状況にある。英国等のPFIやLABVは、本来、財政的に厳しい自治体が民間の資金やアイディアを活用して、公共事業を推進する手法である。こうした諸国の自治体や国内の先進事例の新たな手法について調査・分析を行い、公共施設再編のマネジメント手法を採用するための方策を明らかにする。
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