本研究は、古代の東アジアの建築技術について、大陸から技術伝播が窺え、組織的な造営体制のもとで、日本国内で中央から地方に技術が広まったことが示されている。これらを踏まえ、本研究では、古代建築史をA.建築技術、B.造営体制、C.儀礼の3つの視点をもって、文献資料の検討、現存建築・絵画・彫刻資料の調査、発掘遺構の集成と分析により、東アジアにおける古代建築の技術体系の再構築を図るものである。 ただし、当初予定していた中国における現地調査はコロナかによる現地の事情により、変更を余儀なくされ、その部分は日本において収集可能な文献資料の情報を用いて保管した。、 こうした状況を踏まえ、古代東アジアの建築技術の伝播のうち、大工道具に着目し、国際研究集会において検討した。12月10日に、国際研究集会は京都府立京都学・歴彩館において、国際研究集会「御所(宮殿)・邸宅造営関係資料の地脈と新天地(3)」を開催した。日本に関しては、「歴史資料としての日本の大工道具と工匠史料」により、大工道具を単なる道具と位置付けるのではなく、史料として位置づけた。また「『営造法式』からみた中国宋代の大工道具、「韓国の大工道具」と中韓からの報告も加え、その後のディスカッションにより、日本に限らず、東アジアにおいて、現存建築・発掘遺構・文献資料・絵画資料などを総合的に扱うことで、解明が可能であることを示した。 なお建築史学以外にも、考古学・文献史学の立場から、同様の東アジアにおける研究連携を進めており、「渡来系技術から見た古代山城・鞠智城」といった他分野への波及や同様の視座の問題意識の共有が果たされている。
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