研究課題/領域番号 |
18H01620
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河合 宗司 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40608816)
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研究分担者 |
下山 幸治 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (80447185)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 航空宇宙流体力学 / 乱流境界層 / 高レイノルズ数流れ / 数値流体力学 / LES |
研究実績の概要 |
研究初年度となる本年度は、航空機やロケットなどの空力特性や安定性、さらには熱環境に重大な影響を及ぼす、剥離・再付着や加熱・冷却壁を伴う乱流境界層現象に対する詳細な流体現象メカニズムを解明することを目的とし研究を進めた。剥離・再付着や壁面熱流束を伴う乱流境界層現象の解明には、研究代表者らが開発している高次精度数値計算スキームに基づく圧縮性流体解析ソルバーを用いたlarge-eddy simulation(LES)を用いた。本年度は、計画しているレイノルズ数条件における比較的低いレイノルズ数条件について、なだらかな逆圧力勾配により剥離・再付着する平板乱流境界層、および冷却・加熱壁を伴う平板熱乱流境界層の高精度LESデータベースを構築した(比較的高いレイノルズ数条件についてもLES実施に向けたセットアップに着手している)。また構築したLESデータベースを用いて、乱流統計量や乱流構造の観点から平板乱流境界層剥離・再付着現象や熱乱流境界層現象の解析を行った。加えて、LESの壁面応力モデル(内層乱流応力バランスモデル)構築の観点から、対流項や圧力項、熱応力項成分と、粘性項やレイノルズ応力項成分の応力バランスを明らかにすべく解析を進めている。次年度に実施予定の比較的高いレイノルズ数条件でのLES解析と合わせて、剥離・再付着や熱流束を伴う乱流境界層現象に対するレイノルズ数効果やその内層乱流応力バランスモデリングにつながる知見が得られると期待している。また本研究では、不確かさを定量化したデータの統計的特徴を解析することで現象理解や物理モデルの構築を試みるというアプローチも試しており、動的サンプリングと次元縮約を組み合わせた不確かさの定量的評価手法を開発し、テスト問題および空力問題への適用を通して、本手法の有効性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初では、なだらかな逆圧力勾配により剥離・再付着する平板乱流境界層、および冷却・加熱壁を伴う平板熱乱流境界層の大規模LES解析において境界条件の設定方法などで困難があったが、その問題を解決し、予定通り比較的低いレイノルズ数条件における剥離・再付着や壁面熱流束を伴う乱流境界層の高精度LESデータベースを構築した。加えてレイノルズ数効果を調べるために計画している比較的低いレイノルズ数条件の解析セットアップにも着手した。また構築したデータベースを基に、それぞれの乱流境界層現象に対して乱流統計量や乱流構造、内層乱流応力バランスの解析を進めている。このような状況から、達成度はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
比較的高いレイノルズ数条件の大規模LES解析を実施し、初年度に実施した比較的低いレイノルズ数条件のLESデータベースと合わせて、剥離・再付着や熱流束を伴う乱流境界層現象とそのレイノルズ数効果の詳細物理メカニズムを明らかにするよう研究を進めていく。ここで構築する高精度LESデータベースは、LESの内層乱流応力バランスモデル構築やその検証データとして不可欠なデータベースになると考えている。また加えて、LESにおける内層乱流応力バランスモデル構築に向けて、構築する高精度LESデータベースと同条件にて、まずは既存の壁面モデルLES解析を実施し、既存のモデリングの検証とその問題点を明らかにしていくことを計画している。またその上で、LESデータベースの解析から明らかにする剥離・再付着乱流境界層や熱乱流境界層の内層乱流応力バランスを考慮した内層乱流応力バランスモデルの構築に着手する。また不確かさに対して複雑な応答を示す基礎方程式に支配される物理問題に対して、必要であれば応答を近似する数学モデルの高度化に取り組み、開発手法の有効性を実証していく。
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