研究課題/領域番号 |
18H01622
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
姫野 武洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60376506)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スロッシング / ロケット / 軌道間輸送 / 自由表面流 / 極低温 / 沸騰 / 気液二相流 / 数値流体計算 |
研究実績の概要 |
極低温スロッシング実験では、真空断熱槽(クライオスタット)の内部に設置した小型透明の密閉容器に極低温の液体窒素と常温気体(窒素/ヘリウム)を封入し、スロッシングと温度場が連成する流れ場を実現した。真空断熱槽を電動加振機に連結し、新たに振幅増幅機構を加えたことで、液面変形が砕波を生じる強非線形応答を呈する場合も含め、容器内部での熱交換と相変化に起因する圧力変動を計測し、再現性の良いデータ取得が可能であることを確認すると共に、真空断熱槽の観察窓を通じて容器内部の液面挙動や液滴を高速度撮影した。研究室に既設の大型真空槽を用い、固気液三相状態(63K)の初期条件を実現できることも確認できた。 大型液体水素タンク減圧実験では、外部機関に設置された容量30,000リットルの液体水素タンクと、既往研究で設置済の容器内温度計測システムを改良し、実機により近い寸法のタンクで液体水素を対象とした減圧特性の取得試験を行った。並行して、減圧特性を適切に予測する数値解析手法の構築も進めた。減圧速度が比較的緩慢な場合、貯槽内の初期温度分布に依存して減圧速度や蒸発量(フラッシュロス)を予測できるようになった。 それぞれについて、数値解析の準備を進めた。独自の自由表面流解法(CIP-LSM)に、適切な蒸発モデルならびに固体伝熱連成機能を実装した。流体と固体を含む複数計算領域が、流動のみならず伝熱も含めて適切に練成されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低温スロッシング実験では、大振幅で強非線形応答を呈する場合も含め、再現性の良いデータ取得が可能である実験系を構築できたうえ、大型真空槽を活用した、固気液三相状態(63K)の初期条件の実現も確認できた。 また、大型液体水素タンク減圧実験を複数回実施し、減圧特性予測ついても、モデルベース手法により計算負荷が軽い手法構築に目処が得られた。 数値解析についても、並列計算のアルゴリズムを実装し、より大規模な解析対象とできるよう作業を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
極低温スロッシング試験では、引き続き、大振幅スロッシングを対象とした実験を継続する。初期条件として液位、飽和層の厚さ、圧力に加え、揺動抑制デバイス(邪魔板など)をタンク内に艤装した場合について試験を実施する。また、理学的興味として、初期条件で固気液三相状態とした場合の実験も試みる。 大型液体水素貯槽の減圧特性取得実験については、貯槽底部からの気相水素吹込(バブリング)により減圧開始前の液温分布を色々に変えた場合の試験を試みる。 数値解析についても、スロッシング実験ならびに大型貯槽タンク実験の再現を試みて、沸騰モデル等の寸法依存性を把握すると共に、計算手法の高速化にも取り組む。
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