本研究では宇宙機のミッションの高度化,知能化を見据え,高い熱流束,小型軽量,大きな熱変動対応を満足する全く新しい熱流体制御ネットワークのコンセプトを世界に先駆けて提案し,実験的にその有効性を実証することを最終目的とし,多孔体内沸騰限界の解明に基づく高熱流束型ループヒートパイプの提案,実現,輻射冷却凝縮過程の解明に基づくラジエータの小型軽量化,熱流体制御ネットワークの実証に目指す。本目的を達成するために,多孔体内沸騰限界の解明に基づく高熱流束型ループヒートパイプの実現,輻射冷却凝縮過程の解明に基づくラジエータの小型軽量化,熱流体制御ネットワークの概念設計を行った。 まず,高熱流束ループヒートパイプに関しては将来宇宙機の熱要求である熱流束20W/cm2以上を達成するため,蒸気溝形状,多孔体細孔径,浸透率,濡れ性とシステムの圧力損失の関係を実験及びモデルにより明らかにする。多孔体気液熱流動観察装置を用いて,蒸発器蒸気溝と蒸発熱伝達の関係を明らかにし,20W/cm2以上を達成し得る蒸気溝チャネル構造,動作条件を明らかにした。 次にループヒートパイプ凝縮素過程を明らかにするため,種々の凝縮器形状における凝縮挙動をシートレーザー,ハイスピードカメラで観察し,凝縮様式を明らかにするとともに,凝縮効率向上の指針を得た。また,宇宙用可逆展開ラジエータとの結合方法を検討し,全体の温度分布を詳細に計測することで,流路断面積,流路間隔,基盤の熱伝導率を考慮したフィン効率の最適化を図った。 さらに,小型・軽量化要求に厳しい超小型衛星を対象とし,最先端要求である熱制御性能30~100Wの熱設計を成立させる形状を提案した。
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