研究課題/領域番号 |
18H01632
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 匠未 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (80759861)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | AUV / 自律型海中ロボット / フィールドロボティクス / マルチロボット / 協調 / 海底探査 |
研究実績の概要 |
本研究では,低コスト・高精度・高効率を同時に満たす海底探査システムを実現するために,自律型海中ロボット群(AUV群)による協調探査手法を提案する.1台の高性能なAUV(親機)を核とした音響ネットワークにより,低コストなAUV群(子機群)が高精度に測位しつつ,協調探査を実現する.本年度は低コスト汎用子機の導入および親機を核としたAUV群の測位手法の拡張を行った. 【低コスト汎用子機の導入】これまで使用してきた親機と子機の違いは搭載された姿勢センサのみであるため,子機も一定のコストが必要であった.そこで製品化された低価格の遠隔操縦型水中ロボット(ROV)に自律航行のための状態推定プログラムを開発・実装することで,低コストな汎用子機(Low-cost AUV, 以下LA)を実現した. 【親機を核としたAUV群の測位手法の拡張】開発した測位手法では,子機は親機との音響測位をもとに親機基準で自己の状態(位置と方位)を推定する.本手法がLAを子機とした場合にも機能するかを検証するため,異なる測位性能を有する3台のAUV "Tri-TON 2"(以下TT2),"Tri-TON"(以下TT),LAに本手法を拡張して実装した.TT2には対地速度計および3軸の光ファイバジャイロが搭載されているため,単独で高精度な測位が可能である.そのためTT2を親機として,TTとLAを子機として用いた.水槽での動作試験後,沼津の内浦湾(水深30m)において海域実証試験を行った.状態推定プログラムを動作させた状態でLAをTTに固定して試験を実施し,TT2とTTは150mを自律航行することに成功した.本試験の結果解析を通じて,TTだけでなく単独測位性能が低いLA(航行距離の30%の測位誤差)も親機とほぼ同等の測位精度(航行距離の3%の測位誤差)を実現できる結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では親機だけでなく子機も一定のコストを要する航法センサを搭載したものを想定していたが,製品化された低価格ROVに自律航行のための状態推定プログラムを実装することで,低コストAUVを実現し,子機として運用できるようになった.低コストAUV単体では海底調査に必要な測位精度を達成できないが,親機を核とした測位手法による精度向上を見込んで,低コストAUVに本測位手法を実装した.その結果,水槽環境だけでなく,海域での試験を通じて,低コストAUVも親機とほぼ同等の測位精度を実現できる結果が得られた.これにより提案手法は,あらゆる測位性能の子機にも適用可能であることがわかり,高い拡張性を示すことができた.また汎用的な状態推定プログラムの開発に成功し,製品ROVに本プログラムを実装することで子機の複製も容易になり,当初の計画にはない新しい形で複数AUVの運用の敷居を下げることができた.
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今後の研究の推進方策 |
来年度が最終年度であるため,親機を核としたAUV群の高精度な海底探査手法を確立し,海域での実証を行う.様々な測位性能の複数のAUVが子機群として振る舞い,親機との音響測位・通信のネットワークを構成することで,親機と同等の測位精度を実現する.また海域での低コストAUVの運用基盤を確立するために,搭載された安価な航法センサからの限られた計測情報を用いて自己の状態を推定する方法を開発する.提案手法の動作試験を研究の協力関係にある東京大学と共同で実施する.開発した低コストAUVと東京大学が所有するAUVを用いて,水槽および海域での試験を通じて提案手法の有効性をコスト・測位精度・観測効率の観点から総合的に実証する.
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