研究課題/領域番号 |
18H01635
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
塚本 達郎 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50207346)
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研究分担者 |
佐々木 秀次 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (00554958)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 舶用ディーゼル機関 / 排ガス計測 / 粒子状物質 |
研究実績の概要 |
初年度(2018年度)は,計測系の構築とTHC濃度計測レンジの把握を中心に,舶用4ストロークディーゼル機関および舶用2ストロークディーゼル機関を供試機関とする計測を実施した.最初に,供試機関の排ガス中のTHC濃度計測を実施できるように,購入したTHC濃度計およびボンベ類(燃料ガス,THC標準ガス,窒素ガス,助燃空気ガス)一体型の実験用計測機を製作した.続いて,舶用4ストローク高速ディーゼル機関(73.55 kW, 1200 rpm)および舶用2ストローク低速ディーゼル機関(1275kW,162rpm)を低硫黄A重油で運転した場合の排ガスを対象として計測を実施した.排ガス関連の主な計測項目は,THC濃度,NOx濃度,O2濃度,CO濃度,CO2濃度,FSN(フィルタスモークナンバー)である.舶用4ストロークディーゼル機関から排出されるTHC濃度レンジは,低負荷率時において200 - 500 ppmC,高負荷率時において100 - 250 ppmCであり比較的低濃度であることがわかった.また,同時に計測したFSNによるスート濃度は,低負荷率時で5 - 110 mg/m3であり,負荷率が高いほど高い値でありTHC濃度と反対の傾向を示すことがわかった.舶用2ストロークディーゼル機関から排出される排ガスの計測では,THC濃度は,80 - 120 ppmCとなり,舶用4ストロークディーゼル機関のTHC濃度より低い値となった.これらの排ガスをISO8178によるPM計測を行った結果では,PM中のSOF分割合は2ストロークディーゼル機関の方が高い値を示しているが,THC濃度値は低い値であることがわかった.THC濃度の計測では,ディーゼル機関の排ガスでは191℃の加熱フィルタを通過したガスに対してFIDにより計測を実施するが,ここでの結果から排ガスが191℃において,SOF分の多くが凝縮して加熱フィルタ上に捕集されてしまいTHC濃度計測値が低い値であったこと,高沸点のHC成分が多かったことが考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最初に,THC濃度計測装置の納期が長くなることから,事前に研究準備として,舶用4ストロークディーゼル機関および舶用2ストロークディーゼル機関のPM濃度の質量計測を実施し,さらにジクロロメタンを溶媒としたソックスレ抽出を実施し排ガスのPM中のSOF分割合の把握を行った.研究実績の概要に記したとおり,舶用ディーゼル機関のSOF分割合は高く,特に舶用2ストロークディーゼル機関で運転条件によっては80%を超える値である.この結果より,排ガスに含まれる揮発性成分の割合は高く,当初は高いTHC濃度が計測されることを予測していたため,THCの標準ガスを低濃度化する必要が発生し,その変更に時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は初年度に得られた結果を基に,以下の順番で研究を実施する.舶用ディーゼル機関の排ガスに含まれる未燃の揮発性成分には,高沸点成分が多いことがわかっていることから.最初に,舶用2ストロークディーゼル機関のプロペラ負荷特性,舶用4ストロークディーゼル機関のプロペラ負荷特性および発電機負荷特性に関して5負荷率(25 (30), 50, 75, 85, 100 %負荷)における濃度レンジを下げたTHC濃度計測を実施し,舶用ディーゼル機関の種類,負荷特性別のTHCの排出特性を明らかにする.続いて,排ガス温度,排ガスの希釈によって揮発性成分濃度を調整することで,THC成分の温度,濃度と凝縮の関係を調べる実験を実施する.自動車用のTHC計測法の規格JIS D1030において,THC濃度計測時にディーゼル機関では試料採取流路および分析計温度を191℃とすることが決められている.ここでは,試料採取経路の上流部(排気管)において,冷却によって排ガスの温度を低下させた場合や希釈によってTHC濃度を低下させた場合を対象として,濾紙にて凝縮した粒子を取り除き ガス状成分のみのTHC濃度計測を実施することで,THC成分の凝縮点の把握を試みる.また,同時に粒子化(核生成)状態の粒子計測を,インパクタ,粒子カウンター等で行うことで,THCの凝縮状況を把握する.これらの研究から得られる結果を基に,揮発性成分の凝縮状況および,粒子計測,PM計測等において,サンプリング条件による濃度減損影響の状況を明らかにする.
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