研究課題/領域番号 |
18H01638
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
日野 孝則 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60373429)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 船体抵抗理論 / 計算流体力学 / 水槽試験 |
研究実績の概要 |
本年度は、形状影響係数に関する数値計算と水槽試験、造波抵抗係数に関する数値計算を実施した。 1) 形状影響係数の検討 形状影響係数Kは自由表面影響のない条件の下での粘性抵抗から求める必要がある。実験的に求めることは難しいため、CFDによって自由表面の影響を無視した二重模型流れの解析を行った。計算された船体の粘性抵抗と同じレイノルズ数における平板摩擦抵抗との比によってKを推定した。この形状影響係数の検討については、国際共同研究プロジェクトに参加し、他の機関の計算結果との比較によって、推定法の実用的応用へ向けた課題を抽出した。また、CFD による圧力抵抗算定の不確かさを検討するため、支配方程式から粘性影響を除去したオイラー方程式を用いて非粘性流れを計算する手法を開発した。この手法で二重模型流れを計算すると、ポテンシャル流れではゼロになるはずの圧力抵抗が存在し、オイラー方程式による非粘性流れにおける渦の存在の影響が示唆された。さらに、肥大船を対象とした水槽試験を行い、形状影響係数の推定精度を確認するとともに、抵抗成分分離のための基礎資料を得た。 2) 造波抵抗の検討 水槽試験では、造波抵抗は全抵抗から粘性抵抗推定値を差し引くことで間接的に求めている。したがって造波抵抗の推定精度は粘性抵抗評価(すなわち形状影響係数)の精度に依存することになる。CFDにおいても、自由表面流れの解析による全抵抗から二重模型流れによる粘性抵抗を差し引いて粘性流れにおける造波抵抗を算出した。また、1)の非粘性流れ計算法を自由表面流れに拡張することで、非粘性の造波抵抗を計算した。CFDによる非粘性流れの造波抵抗と粘性流れの造波抵抗の差を解析することで造波抵抗に対する尺度影響を考察するとともに、水槽試験の造波抵抗推定を補正する方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形状影響係数の推定および造波抵抗の推定について検討を行った。 数値計算については、粘性影響を考慮しないオイラー方程式による二重模型流れおよび自由表面流れの計算法を開発し、抵抗成分分離のための非粘性成分評価が可能になった。 水槽試験については、昨年度の痩せ型船型に加えて本年度は肥大船型の試験を行い、形状影響係数および造波抵抗に関する計測データを取得した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究では、 (1) 平板摩擦抵抗に関して、CFD計算を用いて広範囲のレイノルズ数に対して平板の摩擦抵抗を計算して、標準的な平板摩擦抵抗係数を検討した。 (2) 形状影響係数に関して、自由表面の影響を無視した二重模型流れの解析を行い、(1)における平板摩擦抵抗の寄与を考慮して形状影響係数を求めた。また、通常の支配方程式であるナビエ・ストークス方程式を粘性影響を無視したオイラー方程式に変更し、非粘性流れを計算する手法を開発するとで、圧力抵抗の積分法について検討した。これらの方法を異なるレイノルズ数での抵抗計算に適用し、形状影響係数の尺度影響を検討した。 (3) 水槽試験における形状影響係数決定の精度検討のため、 船首バルブを有する痩せ型船と肥大船の 2 船型を対象として模型船による水槽試験を行い、CFD解析との比較によって形状影響係数推定における船型の影響を流体力学的に考察した。 (4) 造波抵抗係数の検討として、水槽試験や通常のCFD解析で行われる造波抵抗を全抵抗から粘性抵抗を差し引く手法に対して、CFDにおいて、オイラー方程式による流れ解析に自由表面を考慮することで非粘性の造波抵抗を直接求める手法を比較検討した。 次年度は、(5) 実船抵抗推定法の確立として、今年度までの検討により、抵抗成分の各要素について尺度影響を評価することが可能になったことを踏まえて、最終段階としてCFDと水槽試験を併用した実船抵抗推定法として構成する。新たな推定法を水槽試験結果に適用し、従来法および実船スケールの CFD 直接直接計算との比較によってその有用性を検証する。
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