研究課題/領域番号 |
18H01639
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩下 英嗣 広島大学, 工学研究科, 教授 (60223393)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | FBG圧力センサー / 非定常圧力 / Added pressure / 簡易結合法 |
研究実績の概要 |
数値流体力学(CFD)や実験流体力学(EFD)による圧力場の解析は、航空機や船舶における流体解析において共に最重要研究課題に位置付けられ、船舶耐航性能分野においても昨今のCFDの進展に呼応して、その検証に供することのできる飛躍的なEFDの進展が切望されている。本研究では、光センシング技術の一つであるFBG (Fiber Bragg Gratings)を用いた圧力センサーにより、波浪中を航走する船舶に作用する非定常な圧力分布を船体全域で面的に計測できる革新的なEFD技術の開発を目指す。片や、簡易結合法に基づく高精度な耐航性能3次元理論推定法を新規開発し、既存のストリップ法、EUT、CFDによる推定法と共に、上記EFDで取得された非定常圧力レベルでのベンチマークテストを行い、各理論推定法の妥当性やEFDで取得された圧力データ自体の有用性を明らかにする。 本研究は、①FBG圧力センサーによる波浪中を航走する船舶に作用する非定常圧力の面分布計測データの構築、②簡易結合法に基づく耐航性能の3次元理論推定法にズーミング法を組み込んだ高解像度計算法の開発、③非定常圧力の面分布計測データを用いた既存の理論推定法のベンチマークテスト、の3つの項目に分けて遂行している。このうち初年度は特に①に注力して研究を遂行し、当初計画していた圧力分布のデータ取得に加えて船側波形のデータ取得に成功するなど良好な成果を得ている。2年度目の令和元年度は、高精度で圧力分布を計測するための温度条件等について調査すると共に、計測点数を更に増やした圧力分布計測を実施している。また②のズーミング法の開発を行い、船尾をトランザム近似することで数値計算の解像度を高めることができることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度および2年度においては①として、これまでの不具合を改善した最新版のFBG圧力センサーを供試模型船(RIOS Bulker)表面に343点ほど貼り付け、正面規則波中での非定常圧力分布の計測を実施した。FBG圧力センサーは水面上の船体へも貼付して計測範囲を広げると同時に、船体の各断面に沿って容量線を張り船側波高も計測した。これによりゲージ圧がゼロとなる点が捕捉され、より高精度な圧力分布を取得できることを確認している。また、FBG圧力センサーの温度干渉影響を調べる計測も実施し、高精度な計測値を取得するためには、水温に対する気温差|ΔT|が|ΔT|<1.0度を満足する必要があること、インタロゲーターに光ケーブルの変形による偏波を補正するデポラライザーを装備する必要があること、などを明らかにしている。②については、これまでに簡易結合法に基づく耐航性能の3次元理論推定法にズーミング法を組み込んだ高解像度計算法の開発し、船尾部をトランザム近似することで数値計算の安定化と高解像度計算格子を適用した数値計算が行えることを確認している。③については、既存のストリップ法、EUT (Enhanced Unified Theory)、簡易結合法を含む各種ランキンパネル法による数値計算を実施し、①で取得された非定常圧力の面分布および抵抗増加との比較を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
以上の成果を踏まえ、今年度は、まず①に関連し、これまでのバルクキャリアー船型とは異なる船型への適用例として、RIOSコンテナ船型を用いた水槽試験を実施し、計測感度を更に高めたversion 7のFBG圧力センサーを用いて船体表面上の圧力分布を取得する。バルクキャリアー船型とコンテナ船型は建造量の多い代表的な船型であり、2船型において本課題で提案する圧力分布の計測法が妥当であることが確認されれば、その汎用性を確認したことになる。2次の流体力成分である抵抗増加に関して、計測された圧力分布の積分により得られる値と、歪ゲージにより直接的に計測される値とがどの程度の精度で合致するのかを評価指標にして本計測法の精度についても明確にする予定である。また並行して、FBG圧力センサーの温度干渉影響の原因について調査し、その影響を小さくする改良を施してセンサーとして完成させる。 次に②については、昨年度までに開発している簡易結合法に基づくズーミング法を用いてコンテナ船型に対する数値計算を実施し、①で得られた結果と比較を行う。加えて③については2船型に対するCFDによる数値計算を行い、ベンチマークテストに使用する計算法の種類を増やす。最後に、得られた結果を論文により広く公開していく。
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