研究課題/領域番号 |
18H01643
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
石井 和男 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (10291527)
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研究分担者 |
西田 祐也 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (60635209)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水中ロボット / 水中画像処理 / 水産養殖 / ASV-ROV協調システム / 水中音響通信 |
研究実績の概要 |
本研究では,海洋調査及び水中インフラを自動で検査・保守において基盤となる水中環境用の情報処理技術に関して研究開発 を進めている.水中画像処理技術,画像による対象物認識技術,浅海での自己位置推定技術,ASV(自動支援船)と水中ロボットの協調制御,深海域調査実験に より明らかとなった課題への解決法,等の水中基盤技術について研究を進め,さらに実証実験により有効性を確認する。 水中画像処理技術に関し,マリンスノーに代表される水中浮遊物の除去手法について研究を進めた。水中ロボット自身の移動に起因する画像中のオプティカルフローと他の移動によるものを分類するフィルターを作成し、海底環境を模擬した水槽実験、及び、昨年度取得した海底面画像に適用し、浮遊物を除去できることを確認した。 橋梁の橋脚水中部の観測を目的として開発中の支援船ーロボットシステムについて、外部支援計算機からの制御系によりロボットの方位制御が良好に行えることを確認し、高速道路の橋脚水中部の撮影実験を行なった。 水中画像の超音波伝通信に関し、チャープ信号とQPSK変調方式を用いた画像伝送システムを開発した。市販の超音波振動子を用い、水槽試験において近距離では10Kbpsで伝送できることを確認した。画像圧縮に関してはオートエンコーダを採用し、画像の圧縮及び受信側において復元できるシステムを開発した。今後、実海域において実証実験を行う。 船底清掃用水中ロボットに関し、運動制御システムの精度向上を行なった。船底をブラシで清掃しながら航行するため、その反モーメントに対し船体の姿勢制御が課題であり、推進器の追加とそれに伴う制御アルゴリズムについて研究開発を行なった。 また、水中情報処理技術が必要となる環境として、し尿処理施設や海岸沿岸部の調査を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AUVー支援船間の海底面画像の超音波画像伝送に関し,その成果は海洋分野ではトップクラスの論文集IEEE JOEに掲載されており、さらに画像補正技術を改善させており、国際学会において複数の論文を発表済みである。海底面のクラスタリングに関してもIEEE JOEに掲載され実海域において行なった意義が評価されており、水中ロボットのによる海底観測技術の進展に大きく貢献している。水中画像処理にAI技術を導入したものであり、さらなる高機能化が期待できる。 ICAROB2021及びSII2021において、ROVのケーブルの制約を活用した定点エリア観測システムの提案、水産養殖の給餌における魚の満腹度推定の提案、小型水中ロボットの開発、橋梁のクラックの判別、レーザーを用いた海底面3次元マッピング等について発表しており、順調に成果を上げていると判断する。 また、研究成果の社会実装として、インフラ整備関連企業や水産養殖業関連企業との共同研究を実施中であり、海底掘削への超音波技術の導入、船底清掃技術の移転、し尿処理施設へのロボット導入の可能性調査も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
水中環境に起因する多くの課題に対し、人工知能技術や情報処理技術を発展・統合させ,水中ロボット及び無人支援船を活用した観測技術を提案する。実海域実験を通じて、提案する技術・理論を評価し、海中環境調査,水中構造物調査に 関する基盤技術を確立する。 水中画像処理技術に関し画像鮮明化技術と浮遊物除去処理技術を融合させ、水中画像補正技術のまえ処理について完成度を高める。観測対象の生物の自動トラッキング技術を開発する。海底生物自動認識に関し、対象物存在領域(興味画像)から生物を自動抽出,その局所情報をもとに海底生物の特徴ベクトルを作成し,海底生物自動認識用データベースを構築する。 支援船への海底面画像の超音波伝送技術に関し,昨年度に引き続きオートエンコーダを用いた撮影海底面画像に対する自動クラスタリングと画像圧縮技術に関する研究、実海域実験を通じてスラスタによるノイズ発生等の課題への対処を進め,実海域実験においてAUV-ASVの連携技術に関する基盤技術確立を進める。 運動制御技術に関し,海底面や水中構造物への一定距離保持,水中マニピュレーターロボットの協調運動制御技術を確立する。ロボットの姿勢情報,音響システム及び画像処理を統合し自己位置推定技術を発展させ、実海域実験を通じて評価する。 システムの統合:水中ロボットの支援を行うため,東海大学海洋実験船北斗の協力のもと,水中ロボット-ASV間の協調制御実験を進める。 これらの課題を実海域において実証実験を通じて,その性能を評価し,水中環境用情報処理技術を確立する。
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