研究課題/領域番号 |
18H01657
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
前田 恭伸 静岡大学, 工学部, 教授 (60270980)
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研究分担者 |
淺野 敏久 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (00284125)
森 保文 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会環境システム研究センター, 主席研究員 (30174387)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ボランティア / NPO / 情報システム / 環境活動 / ボランティア機会理論 |
研究実績の概要 |
本研究では3つのプログラムを実施する。第一の目的は、ボランティア機会理論の精緻化であるが、これは主に森が担当する。第二の目的は新しいボランティア募集システムの構築であるが、これは前田が担当する。第三の目的は、実際に活動しているNPOや市民グループの協力によりシステムの運用状況のデータを得、それを分析することであるが、主に淺野が担当する。 これまでの3年間(平成30年度~令和2年度)には、以下のことを行った。ボランティア機会理論の精緻化のためには、文献のレビューをもとにAjzenの合理的行為理論・予定行動理論に基づいて仮設を設定し、それに基づいてアンケート・インタビューを組み立て、調査を実施した。3年間の複数の調査によって、友人がボランティア活動継続の鍵になっていること、そういう経験があることがその後のボランティア参加につながっていることが示された。それら結果の一部は、環境科学会、日本NPO学会の論文として発表された。また森はこの関連研究で令和3年度文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞した。 第二は新たなシステムの構築であるが、まずシステムを改良するための体制を構築した。次にこれまでのシステムの試用からでてきたニーズをレビューし、新システムの開発を進めている。また旧システムの利用を経て得られた知見はISTR Asia Region Conference 2019に発表するとともに、エコミュージアム研究誌の論文として発表した。 第三に、実際に活動しているNPOや市民グループの協力体制の確立を進めた。広島県等を念頭に、環境活動のためのボランティア募集にこのシステムを試用した。その経験から新たなシステムの使用方法の提案や逆に問題点など知見を得ることができた。また瀬戸内海の流域住民の環境活動への参加意識と情報収集の実態に関する調査を行った。この結果は水資源・環境研究誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では令和2年度までに下記のようなことを行う予定であった。第一にボランティア機会理論の精緻化については、文献のレビュー、仮説の設定を行い、その仮説に基づいて調査を行う。第二に、新たなシステムの構築とその運用によるデータの取得・分析のためには、これまでのシステムの試用からでてきたニーズのレビューに基づく新たな仕様を検討し、実際に新システムを作成する。第三にこのシステムを使って社会実験を進めるため、実際に活動しているNPO・市民グループに協力を求め、社会実験のプラットフォームを構築し、実際に社会実験を実践してみる。 このうち第一の点については、実際に全国レベルの2回のアンケート調査と、フォーカスグループインタビューを実施できた。その結果の一部は、環境科学会、日本NPO学会の論文として発表された。この点では計画よりも研究を進展させることができた。第二の点については、新たなシステムを構築するための体制を確立し、新たなシステムがほぼ出来つつある。これまでのシステムの試用からでてきたニーズをレビューし、得られた知見はISTR Asia Conference 2019にて発表するとともに、エコミュージアム研究誌の論文として発表した。その意味ではこの点はほぼ予定どおりである。そして第三の点については、環境活動を行っている団体と協力関係を確立することができた。加えて瀬戸内海の流域住民の環境活動への参加意識と情報収集の実態に関する調査を行い、この結果は水資源・環境研究誌に発表した。また地域のエコミュージアム活動に協力するボランティアの募集と連絡に情報システムを使用し、そこからシステムの新しい使い方の提案と問題点の指摘というフィードバックを出すことができた。ただ、コロナ禍の中にあり、実際に人を集めての活動はほぼできなかった。 以上の点から全体としては、おおむね順調に進展していると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
当初、今後の研究は次のように進める予定であった。 第一に、ボランティア参加要因の探索と理論の精緻化については、次の段階の研究として、ふたつの研究を計画していた。ひとつめは、これまでのアンケート調査を補完する教室レベルの実験と、オリンピック・パラリンピックのボランティアを対象とした調査である。 第二に、システムの拡充については、昨年度構築した新システムにTwitter等既存SNSとの連携機能などを実装し、その有効性を検証する。また、ボランティアが団体を立ち上げることを支援する仕掛けを導入する。 第三のシステムを用いた社会実験については、広島(太田川流域での生態系保全)等での活動を中心にシステムを展開し、ボランティアの活動への参加を促進させる社会実験を行う。具体的には賀茂台地エコミュージアムでのボランティアの獲得と交流に、このシステムを試用する。その過程で、次の段階としてこのようなシステムが社会的ツールとして成立する条件を探索する。 しかし新型コロナウイルスの感染拡大が世界中の社会活動を制約している。人々が集団として密接に行動をすることが制限されている状況では、そもそも環境活動、社会活動のためにボランティアを集めること自体が難しい。そこでこの問題から派生した第四の課題として、このようなパンデミック問題がボランティア活動にどのような影響をあたえるのかについて研究を進める。
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