本研究の目的は,電動車(EV)を用いて,太陽光発電(PV)の電力を調整,輸送および供給するシステムのCO2排出量の削減効果,経済性,レジリエンスの効果を明らかにし,システム構築の設計指針を得ることである. 2018年度は,PV,EV,家庭および勤務先のエネルギー収支を,EVの地理的,時系列の移動を含めて統合評価するサイバーフィジカル数値計算モデルを世界で初めて開発し,数値シミュレーションに必要な実績データ収集と整理を行った. 2019年度は,開発したサイバーフィジカルモデルを用いて,最小単位のグリッド(一戸建住宅)での効果を明らかにし,グリッド間の連携調整によって,ゼロエミッションの軸となるバーチャルグリッドを提案した. 2020年度は,バーチャルグリッドの要素である2つのグリッド間,具体的には①各種住宅と勤務先,②鉄道とターミナル駅,③電動バスとターミナル施設を対象にEVによるPV電力を調整,輸送および供給する,解析を行った.その結果,いずれも2つのグリッド間の組み合わせでCO2排出量を70~80%削減できる可能性を明らかにした. 2021年度は,2020年度の①各種住宅と勤務先および③電動バスとターミナル施設を統合化したバーチャルグリッドについて,岐阜大学を事例にシミュレーションを行い,その結果,岐阜大学を中心にした勤務者家庭,通勤通学バスおよび岐阜大学のトータルとして経済的にCO2排出量を約70%削減できることを明らかにした.なお,本検討において,岐阜大学に設置した装置を用いた実験の結果,太陽光の電力は,EVを使って調整,輸送および供給するバーチャルグリッドの方が商用系統を使って調整,供給するよりも,送電損失を少なくでき,送電効率を高くできることを明らかにした.
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