研究課題/領域番号 |
18H01668
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
川西 優喜 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70332963)
|
研究分担者 |
永吉 晴奈 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (70516757)
八木 孝司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80182301)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 微量汚染物質 / 酵母バイオアッセイ |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、広範な生物応答を指標に、多種多様な微量汚染物質を高感度検出する多種類のバイオアッセイ酵母を作出することである。申請者らがこれまでに作出した28種類のバイオアッセイ酵母は、核内受容体結合活性、神経伝達物質様活性、昆虫変態ホルモン様活性、DNA損傷応答誘発性、重金属応答誘発性を検出する。本課題でそれぞれの細胞壁を消化し、酵母細胞内への汚染物質流入量を向上させる。細胞外への再流出を、薬剤排出ポンプ遺伝子を破壊することで阻止する。細胞内に保持される汚染物質濃度を高めることでこれらバイオアッセイ酵母は高感度化する。それぞれの高感度化アッセイ酵母に適切な環境試料前処理法を開発する。これらを組み合わせ高感度・簡便・安価なアッセイ法として確立する。日本とアジア地域(台湾)で様々な環境試料をアッセイする実証試験をおこなう。 本年度は甲状腺ホルモン受容体、ビタミンD受容体、ファルネソイドX受容体、プレグナンX受容体、多環芳香族受容体結合活性アッセイ酵母を高感度化対象とした。 これら受容体結合アッセイ酵母の、外来異物の細胞外への排出をおこない薬剤排出ポンプとして知られる、ABCトランスポーターに属する一群のたんぱく質遺伝子を破壊した。遺伝子破壊には部位特異的組換え法の一つCre-loxP法を用いた。標的とした薬剤排出ポンプはPdr5、Pdr10であった。また細胞壁部分消化条件では細胞壁たんぱく質Cwp1、Cwp2遺伝子破壊もおこなった。これら一連の操作により物質の浸透性が高まる一方、外来異物の排出能力を欠くことで、バイオアッセイにおいて酵母細胞内の被検物質濃度が恐らく上昇し、実際に検出感度の飛躍的な改善が期待された。しかし、改善したのは多環芳香族受容体酵母のみで、甲状腺ホルモン受容体、ビタミンD受容体、ファルネソイドX受容体、プレグナンX受容体酵母の高感度化はわずかであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の中では、実験としてもっとも時間を要するCre-loxP法による部位特異的遺伝子破壊の過半数が終了したため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度はレチノイン酸受容体 (RAR)とレチノイドX受容体アッセイ酵母を高感度化対象とする。外来異物の細胞外への排出をおこない、薬剤排出ポンプとして知られる、ABCトランスポーターに属する一群のたんぱく質遺伝子を破壊する。遺伝子破壊には本年度同様、部位特異的組換え法の一つCre-loxP法を用いる。標的すると薬剤排出ポンプはPdr5、Pdr10、Pdr11、Pdr12、Snq2、Yor1、Ste1、Aus1などである。ポンプの排出対象物とレポーター酵母の想定リガンドの関係を考慮し、バイオアッセイ酵母株ごとに破壊遺伝子と、複数破壊する場合はその組み合わせを検討する。細胞壁部分消化条件では細胞壁たんぱく質Cwp1、Cwp2遺伝子破壊も検討する。 次年度より、細胞壁消化酵素によるアッセイ酵母のプロトプラスト化を試みる。 一連の操作により物質の浸透性が高まる一方、外来異物の排出能力を欠くことで、バイオアッセイにおいて酵母細胞内の被検物質濃度が飛躍的に上昇することが期待される。また、ひきつづき関西地区およびアジア地域の環境予備調査をおこなう。
|