研究課題/領域番号 |
18H01672
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森口 周二 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20447527)
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研究分担者 |
高瀬 慎介 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 講師 (00748808)
寺田 賢二郎 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (40282678)
大竹 雄 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90598822)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 斜面災害 / V&V / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本年度は,V&V作成に向けた基礎的情報の整備を目的として,落石と土砂流動のシミュレーションに関して,ベンチマー ク問題の整備と不確実性をもたらす因子の定量化を行った。 落石については,木製の落石モデルと模型斜面を用いた実験を対象として,落石の最終到達位置分布を再現することにより,解析精度をチェックするベンチマーク問題として設定した。この中では,実験結果と解析結果の最終到達位置分布の差を定量化する方法などについても整備している。また,整備したベンチマーク問題を使って,解析パラメータが解析結果に与える影響についても定量化した。さらに,斜面を構成する材料の空間的なバラツキが落石挙動に与える影響についても分析した。その結果,落石については,反発係数と摩擦角が寄与度の高いパラメータであり,物性の空間的なバラツキはそれほど大きな意味を持たないことが確認された。 土砂流動については,砕石を用いた模型実験をベンチマーク問題として設定し,到達範囲および到達距離を対象として解析精度をチェックする問題を整備した。また,複数の解析結果に主成分分析を適用して,パラメータ間の相関関係を分析するとともに,各解析パラメータが解析結果に与える影響を調べた。現在,各パラメータの解析結果に対する寄与度の定量化を試みている。また,実大規模の土砂流動実験を対象として,その再現解析を実施した。これらの結果から,土砂流動については,底面摩擦の影響が非常に大きいことを確認している。現在,さらに詳細な分析を目的として,各パラメータの影響度の定量化を試みている。 上記の他に,落石と土砂流動の共通のベンチマーク問題として,基礎的な問題の情報を整備した。また,人工的に作成した粒子を用いて粒状体の安息角を計測する実験を実施した。この実験については,現在,再現解析を実施しており,ベンチマーク問題としての可能性を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5つの研究項目のうち,ベンチマーク問題の設定と解析精度の定量的評価方法の確立,および,不確実性の定量化(各因子の影響度の定量化)に対して取り組み,一部分析が完全に終了していないものがあるものの,2年目に予定していた実施内容を一部先行して進めているものもあり,1年目の内容としては概ね順調な進捗である.なお,落石と土砂流動の両シミュレーションに対して共通のベンチマークとなる人工粒子を用いた安息角実験については,当初の予定では構想に含まれていなかったものであるが,個別要素法によるシミュレーションの精度を測るためのベンチマーク問題として追加的に本研究で実施しているものであり,研究の内容は当初の予定よりも若干拡大している状態である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり,1年目(初年度)に設定したベンチマーク問題や確立した解析精度の定量的評価方法の情報に基づいて,計算結果に影響を与える各因子(主に解析パラメータや計算条件)の影響度を定量化するための研究を進める.落石については,既に影響度の分析を先行して行っているが,さらに詳細に分析を進めることで,より工学的に重要となる知見が得られる可能性が高いため,引き続き分析を進める.また,土砂流動については,影響度の定量化を本格的に進める.これらの議論のためには,非常に多くの計算ケースが必要と考えられ,1年目に蓄積した計算ケースのみでは不足する可能性があるため,必要に応じて計算ケース数を増やしながら分析を進める.また,3年目(最終年度)に予定している,必要となる計算条件の明示を意識して,定量化した影響度に関する議論を進める.
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