研究課題/領域番号 |
18H01673
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
若月 泰孝 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (70455492)
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研究分担者 |
加藤 雅也 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 研究員 (00648272)
牛山 朋来 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(水災害・リスクマネジメント国際センター), 研究員 (50466257)
岩崎 博之 群馬大学, 教育学部, 教授 (70261823)
清水 慎吾 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (70462504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 短時間降水予測技術の高度化 / 河川流出予測技術の高度化 / 研究体制の強化 / 複数の研究成果 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、低負荷型レーダデータ同化による直近の豪雨予測技術の高度化と河川流量予測技術の高度化について、それぞれのチームで独自の技術開発を実施し、非常に良好な成果をあげることができた。低負荷型レーダデータ同化による直近の豪雨予測技術については、以前に基礎的な技術開発を行っていた上流下層加湿法という、大気モデルシミュレーションにレーダによる降雨観測の情報を簡易的に同化する手法をベースに開発を進める予定であった。この技術の高度化も順調に行ったが、これに加えて、選択的アンサンブルナウキャストという技術を開発することができた。この手法は、レーダによる降水エコーの移動情報を時間外挿する補外予測において、アンサンブル予測を導入するもので、気象庁の最先端の降水予測である高解像度降水ナウキャストと同等以上の精度を上げることができ、論文として公表した。また、簡易型データ同化ではないものの高密度観測データを同化することによって短時間降水予測を行う研究についても複数の研究成果を学会で発表することができた。 河川モデル予測研究においても十分な成果をあげることができた。モデルによる河川水位予測において、粒子フィルタを適用しすることで予測精度を向上させ、水位上昇予測のリードタイムをより長くすることができ、論文として公表した。 降水予測に活用するレーダなどの気象観測とそのデータ解析に関しても成果が上がった。雨滴粒径分布をXバンドマルチパラメータレーダから推定するアルゴリズムの開発を行い論文として公表した。将来的に気象モデルシミュレーションなどへの活用が期待される。 その他、数日スケールの河川水位予測精度向上に関する研究、都市域の降水の発生ポテンシャル予測に関する研究、水蒸気量や雷観測技術に関する研究などで複数の学会発表を行った。 2回の研究集会を実施し、研究体制の強化とモチベーションの向上を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は、当初予定通りに、研究チームに分かれてそれぞれの技術開発を進めた。この中で、本課題研究の最重要課題である2~3時間先の降水予測研究については、当初の予定以上の成果をあげることができた。特に、開発した選択的アンサンブル手法による短時間降水予測では、当初予定していた成果以上の予測性能を出すことができ、初年度から論文発表することができた。この手法は、今後の防災研究において重要な役割を果たしていくことが期待される。また、簡易型データ同化手法である上流下層加湿法についての開発も進め、偽物の降水を除去するスキーム開発を行った。また、簡易型ではない高密度高精度観測を用いたデータ同化による降水予測技術の開発も進み、今後簡易型データ同化予測との比較検証が期待される。これらの研究で複数の論文と学会発表を行うことができた。 河川モデルによる流出予測研究においては、粒子フィルターを用いた中小規模河川の水位の予測技術の高度化研究などを推進することができた。用いているのは土木研究所のRRIというモデルで、九州北部豪雨などでの流出予測での予測のリードタイムを早めることに成功した。 ダム制御や大規模河川流出予測を念頭に置いた、数時間以上先の降水・流出予測予測研究においては、名古屋大学と土木研究所で降水予測と河川流出モデルのシステムが独自開発された。土木研究所のシステムでは降水予測にアンサンブル予測を導入し、名古屋大学のシステムでは高解像度実験に焦点をあてたシステムにした。 観測データの解析において、降水予測に活用するレーダなどの気象観測とそのデータ解析に関して雨滴粒径分布をXバンドマルチパラメータレーダから推定するアルゴリズムの開発、雨滴粒径分布の解析、雷特性の解析、都市降水の発生ポテンシャル解析などの研究の進捗があり、学会発表もなされ、将来的に予測技術向上への貢献が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は、計画時の予定通りチーム間連携を図りながら研究を進める。 本課題研究の最重要課題である2~3時間先の降水予測研究については、まず、過去数年以内に発生した豪雨事例を数事例抽出する。抽出した豪雨事例は、数時間から十数時間の豪雨現象である線状降水帯事例、寿命が数時間しかない局地的大雨事例を抽出する。これらの事例について、アンサンブルナウキャストによる補外予測(茨城大学)、上流下層加湿法によるレーダデータ同化を行った数値予測(茨城大学)、レーダだけでなく様々な局地気象観測を3次元変分法で同化した短時間数値予測(防災科学技術研究所)を行う。これらの予測を比較解析した後、組合せによる予測によって予測精度がどのくらい向上するかを検証し、高精度予測技術開発を推進する(茨城大学)。 一方、河川モデルを用いた河川流量予測技術の高度化研究も進める(土木研究所)。特に河川水位の予測の不確実性情報に、先行する雨の情報を組み込む研究などに挑戦し、高精度化を図る。開発した技術を用いて、茨城大学と防災科学技術研究所で計算された降水予測データから、洪水のリスクの事前予測の可能性を探る。 ダム制御や大規模河川流出予測を念頭に置いた、数時間以上先の降水・流出予測予測研究(名古屋大学,土木研究所)においては、現行システムの高度化を推進する。特に、河川モデルにおける土壌パラメータの設定方法の検討や、アンサンブル予測の適用性の検討などを行う。案時間降水予測研究と来年度に連携を図ることを念頭に研究を推進する。 その他の研究として、都市域での降水発生の特性調査を継続することによって、降水予測に発生ポテンシャルを組み込むことの可能性について調査する。また、雷観測やレーダ観測データの解析から、レーダや雷観測を予測に組み込むための基礎的な知見をさらに探る。 研究体制の強化のため研究連絡会を予定している。
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