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2020 年度 実績報告書

日本における竜巻発生環境の再評価に基づいた竜巻発生予測の高精度化

研究課題

研究課題/領域番号 18H01682
研究機関高知大学

研究代表者

佐々 浩司  高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (50263968)

研究分担者 野田 稔  高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (30283972)
本田 理恵  高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (80253334)
宮城 弘守  宮崎大学, 工学部, 助教 (90219741)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード竜巻 / レーダー観測 / 画像解析 / 室内実験 / スーパーセル
研究実績の概要

本学のレーダーネットワークによって捕捉された竜巻の親雲20事例について、詳細な構造を明らかにした結果、①スーパーセル。②波状雲、③スコールライン、④クラウドクラスター、⑤孤立積乱雲の5種に分類されることを明らかにした。これらのうち、水平スケールが大きいのは孤立積乱雲を除く他の親雲で、移動速度はスーパーセル、波状雲、スコールラインが速いことを明らかにした。また、波状雲は台風のアウターレインバンドよりさらに外側で発生する比較的浅い対流雲であったが、メソサイクロンを有するなど、一部スーパーセル的な特徴も合わせ持つことを示した。一方、小規模な孤立積乱雲においても解像度の高いレーダーを用いると明瞭なフックエコーが認められ、機械学習による自動検出において、典型的なパターンに使用可能であることを示した。これらの親雲と竜巻渦との位置関係については、スコールラインを除き、移動方向に対して最後尾に渦が位置することから観天望気によってもある程度避難行動を取ることが可能であることを示した。
竜巻映像においては、宮崎県延岡市で発生した雲底が低くて大きい漏斗雲の事例について、これまでの機械学習による自動検出の教師データとは異なるもの、被害の可能性の高い例として解析を行った。
室内実験においては、パラメータワークを進める代わりに冷気外出流の侵入によって形成されるノンスーパーセル竜巻の形成過程を詳細に明らかにした。その結果、冷気外出流が上昇流域に到達したのち、竜巻を形成するまでには、①旋回上昇流の形成、②下層気流の旋回、③竜巻状渦の形成、といった3段階に分けて説明できることを示した。これらは、海上竜巻の形成過程について調べた先行研究の成果と極めてよく対応しており、本実験によって、これまで実観測では調べることのできなかった内部気流構造を詳細に示すことができる可能性を提示することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ感染対策のため、研究室における研究活動が大幅に制限されたと共に、学内の対策会議、オンライン授業準備などに時間を取られたため、研究活動に集中できる時間が例年の半分以下となった。このため、機械学習による自動検出アルゴリズムを試験するには至らなかったこと、詳細なパラメータワークを行う実験ができなかったことが最大の遅延要因である。また、極めて稀なことであるが、年度中には解析対象となる事例は発生しなかった。
しかしながら、親雲の分類は詳細に進められたことにより、次年度機械学習をするための教師データのカテゴライズがほぼ完了したことや、室内実験により竜巻形成過程が詳細に明らかにされたことは、大きな成果であり、総じて研究の遅れは最小限に留められていると考えている。
なお、成果発表を予定していた国際会議などは多くが中止になり、成果発表は一部のオンライン会議に限定された。一方、レーダーデータをアーカイブしてきたデータサーバーの一部故障やレーダーサイトの監視カメラの故障などが多発し、旅費に充てていた経費の多くは、監視カメラ代替機の購入やデータ退避用のディスク購入などに充てられた。

今後の研究の推進方策

レーダーデータを用いた竜巻親雲の分類が大きく進展したことにより、これらを教師データに用いた機械学習による自動検出の実施が最も大きな目標となる。このため、学内経費により新たに機械学習専用機も整備した。教師データとしては、20事例の時間変化を全て扱うことでデータ数を増やせるものの、過去のレーダーネットワーク蓄積データや分解能は異なるが気象庁レーダーのデータを用いることにより、さらに多くの親雲事例の分析も進める予定である。自動検出アルゴリズムの有用性が確認されれば、全国の気象庁レーダーデータにも適用し、竜巻親雲の気候学的特性や統計的特性を明らかにする予定である。
画像による漏斗雲の自動検出は実装段階にあるが、さらに進めて強度推定を可能とする検討を進める予定である。
室内実験においては、前年度実施できなかったパラメータワークを進めて、竜巻発生に適する条件を詳細に示すとともに、これらの条件のうちから実観測で把握することのできる指標を検討する予定である。

備考

研究に使用しているレーダーネットワークによる降雨観測情報を常時公開している。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 2019年延岡竜巻の映像解析2020

    • 著者名/発表者名
      宮城弘守,牧野仁胤,佐々浩司
    • 雑誌名

      風工学シンポジウム講演梗概集

      巻: 26 ページ: 29-34

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 微細スケールの竜巻発生環境:調査・実験・観測2021

    • 著者名/発表者名
      佐々浩司
    • 学会等名
      竜巻シンポジウム-藤田哲也博士生誕100 年を記念して-
    • 招待講演
  • [学会発表] 台風外縁の波状雲に伴う竜巻2020

    • 著者名/発表者名
      佐々浩司、村田文絵、西井章
    • 学会等名
      日本気象学会2020年度春季大会(発表扱い)
  • [学会発表] スーパーセル竜巻形成における下降気流の影響2020

    • 著者名/発表者名
      佐々浩司、名黒千尋
    • 学会等名
      日本気象学会2020年度春季大会(発表扱い)
  • [学会発表] スーパーセル下層の気流特性の再現2020

    • 著者名/発表者名
      佐々浩司、名黒千尋
    • 学会等名
      日本流体力学会年会2020
  • [学会発表] 竜巻をもたらした台風外縁の波状雲2020

    • 著者名/発表者名
      佐々浩司、石戸空,村田文絵, 西井章
    • 学会等名
      日本気象学会2020年度秋季大会
  • [学会発表] 高知大学レーダーネットワークで捕捉された竜巻親雲の特徴2020

    • 著者名/発表者名
      藤井虎太朗、佐々浩司
    • 学会等名
      日本気象学会関西支部第1回例会
  • [学会発表] 並列分散処理フレームワークによる時系列画像からの部 分時系列の高速リサンプリングとクラスタリング2020

    • 著者名/発表者名
      棚瀬旺和, 本田理恵
    • 学会等名
      電気・電子・情報関係学会 四国支部連合大会
  • [図書] 竜巻を識る 気象研究ノート 第243号2020

    • 著者名/発表者名
      佐々浩司、林泰一、鈴木修、藤吉康志編、佐々浩司他31名
    • 総ページ数
      297
    • 出版者
      日本気象学会
    • ISBN
      978-4-904129-26-5
  • [備考] TOSA RADAR CHAIN

    • URL

      https://tosa-radar-chain.nict.go.jp/

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公開日: 2021-12-27  

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