研究課題
本研究では、空石積み護岸の積み石が流体力により離脱する際の耐力を引き抜き実験の結果から、定量的に評価し、設計手法を提案することを目的とした。護岸の力学設計法では、法勾配が1:1.5よりも急な場合を石積みと定義している。石積みの破壊の要因は護岸背後の土圧が主要因とされ、土圧に対する活動、転倒の安定性を照査することが示され、これに従い設計が行われている。流速に対しては、美しい山河を守る災害復旧基本方針において、経験則から空石積みは設計流速5m/sまでの箇所に適用が可能と位置付けられているが、物理的な根拠は示されていない。また、空石積みを現場で用いる場合は、1つの石の移動限界粒径よりも大きな粒径を用いるのが一般的であり、噛み合わせは考慮されておらず過大設計となっている。空石積みは、隣り合う石同士がかみ合い、上部あるいは横方向の石材の力を受け耐力を発揮している。石のかみ合いによる引き抜き耐力の大きさを定量的に把握するため、長径約5cmの自然石を用い4段積みの空石積み護岸模型を製作し、積み石を引っ張り、積み石が石積みから離脱した時の力を計測した。引き抜き方向は、流軸に対して90度と斜め45度とし水平方向に引き抜いた。まず、礫上に石を設置し、引っ張り実験を行ったところ、平均で石の重さの約0.8倍の力で移動し、石と礫の摩擦係数が約0.8であることを確認した。次に下から二段目の石(上部に2段の積み石)の引っ張り実験を行った。90度の場合、石の離脱には石重の約8倍の引き抜き力が必要であった。また、45度の場合は、90度で引き抜いた場合の約1.6倍の力が必要であった。かみ合いがない場合は垂直荷重に対して摩擦力が生じるため90度の場合、石重の2.4倍程度の抵抗力になると推定されるが噛み合わせにより、その3倍以上の大きな耐力を発揮した。
2: おおむね順調に進展している
実験施設の設置に時間がかかったため、水理実験は行わず、空石積みの引張試験を行った。研究の進捗としては、概ね順調に進展している。
新設した水理実験施設を使って、護岸の吸出し機構を明らかにするとともに、面的な災害防止技術に関しても研究する。また、ステッププール構造を人工的に作る方法についても実験する。
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Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. B1 (Hydraulic Engineering)
巻: 74 ページ: I_847~I_852
10.2208/jscejhe.74.5_I_847