研究課題/領域番号 |
18H01683
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島谷 幸宏 九州大学, 工学研究院, 教授 (40380571)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 水害 / 護岸 / 破壊 / 水理メカニズム / 水理実験 / 空石積み護岸 |
研究実績の概要 |
本年は空石積みの破壊メカニズムの基礎的な検討を行った。空石積み護岸の特徴のひとつである護岸表面形状と,主な被災要因である護岸裏の裏込め土砂の吸い出し現象の関係性に着目し,吸い出し現象の解明と吸い出し現象に対して安全な空石積み護岸の設計条件の提案を目指したものである.現場への適用に向けては,さらなる知見の蓄積が必要であるが,吸い出し現象の発生メカニズムの一例として,圧力差による砂の流出の可能性を示唆することができ,砂の流出が起こりにくい空石積み護岸の設計条件を明示することができた. 実験は水路幅1m,水路長8mのアクリル製水路を作成して行った.水路床はベニヤ板を使い,水路勾配が1/100となるようにした.空石積みの護岸模型は水路の片側に設置し,アクリル板越しに,護岸正面から砂が吸い出されている様子を目視で確認しやすいようにした.水路幅が30cmとなるように設置し,2.1.1 で説明した円柱を4段積んで護岸を作成した 護岸表面に突部がある場合,その付近で吸い出し現象が発生する.特に,突部直下流の隙間からの砂の流出が顕著にみられた.突部が大きいほど流出土砂量は多くなる.また,吸い出しが発生して20分間が最も流出土砂量が多い.射流の条件において,突部下流の流下方向の流速が減衰する.突部が大きいほど流速の減衰幅が大きくなる.圧力は突部の上流で大きくなり,下流で小さくなる.上下流の圧力差は,特に護岸表付近と護岸裏付近(つまり護岸周辺)にみられた.また突部が大きいほど圧力差も大きくなる.吸い出し現象の発生要因の一例として,護岸表と裏付近の圧力差による裏込め土砂の流出が考えられる.護岸表面に一様な凹凸がある場合,流速や圧力の観点から吸い出し現象が発生しにくいと考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費で新設した実験装置を活用し、3Dプリンターで護岸模型を製作し、空石積みの実験を行った。その結果、これまでに理解されていないメカニズムが明らかになりつつある。非常に実験しやすい装置であること、新たな知見が得られていることから順調に研究は進捗していると判断される。しかしながら、2極化した河床形状の実験はこれからであり、さらなる努力が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
・空石積みの、かみ合わせによる力学的な強度の検討 ・流れによる吸出しメカニズムの解明(特に曲がり部との関係)と吸出し防止方策 ・2極化した河床でのステッププール構造の発生メカニズム ・ステッププール構造の形成手法の着想 ・面的防御方法についての水理実験あるいは解析的検討 以上を総合的に取りまとめる
|