研究課題/領域番号 |
18H01686
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
阪本 真由美 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (60587426)
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研究分担者 |
中道 治久 京都大学, 防災研究所, 准教授 (00420373)
荒島 千鶴 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (70362811)
高橋 若菜 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (90360776)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 越境火山災害 / ガバナンス / 災害緊急支援 / 欧州 |
研究実績の概要 |
2010年のアイスランドの火山噴火をめぐる欧州広域での災害対応の実態をヒアリング調査・文献調査を通して把握した。ヒアリング調査の主な対象は、英国気象庁ロンドンVAAC、欧州委員会人道援助・市民保護総局(DG ECHO)、ノルウェー大気研究所(NILU)、アイスランド大学、レイキャビック大学等である。研究を通して、以下の点が明らかになった。 1 2010年のアイスランドの火山噴火への対応は、アイスランド国内とEUでは大きく異なった。アイスランドでは、噴火に伴う被災者対応、特に避難対応や交通閉鎖など緊急支援が求められたのに対し、EUでは、火山灰の広域拡散に伴う空港閉鎖・航空機運休への対応が求められた。このことは、噴火に伴う火山灰の広域拡散は、通常の災害対応とは異なるイッシューであり、既存の災害対応体制では解決が難しいことを示すものである。 2 欧州では、2010年の噴火を契機に、越境火山災害に対応するための新たなガバナンスが誕生しつつあることが明らかになった。ロンドンVAACでは、火山灰の観測体制・シミュレーションを拡充している。欧州においては、EUによる「第7次欧州研究開発フレームワーク(FP7)」(2007年~2013年)環境プログラムの一環として、2012年10月1日から3.5ヵ年計画でFUTUREVOLCプロジェクトが、そして、その後継としてHORIZON2020が実施されている。北欧議会もレジリエンスと社会安全研究センター(NORDRESS)」を実施している(2014年~ 2020年)。これらのプロジェクトを通して関係者間のネットワークが構築されているとともに、研究分野を超えた連携・協働が各地で促進されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初予定した通りにおおむね順調に進展している。アイスランドと欧州の越境火山に関する調査研究を通し、①越境火山災害をめぐる対応体制は、アイスランドとEUでは大きく異なったこと、②2010年の噴火を契機に、越境火山災害に対応するための新たなガバナンスが誕生しつつあることが確認された。ただし、2月~3月にかけての新型コロナウィルスの流行に伴い、欧米の大学や研究機関が閉鎖、5月に予定されていた国際学会の延期となるなど、今後の国際研究の実施方針を定めにくい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の取り組み方針は以下の通りである。 1.これまで実施してきた調査研究に基づき、越境災害ガバナンス分析のため理論的枠組みを確立する。特に、アイスランドの災害対応体制と欧州における体制との比較検討を通して示される特性を明確化するとともに、欧州において新たに生まれつつ越境火山災害「ガバナンス」の特性を示す。また、越境災害ガバナンス分析の枠組については、国際学会において企画セッションもしくは共同セミナーを開催し、そこでの議論をとおし研究を深める。 2. 東アジアにおける、越境災害ガバナンスの特性を考察するとともに、研究を通して得られた知見を社会実装に結びつけられるよう取り組む。越境火山噴火による火山灰拡散を把握するために新たに開発したアプリケーションの有効性を検証する。 ただし、海外における調査研究や学会参加については、新型コロナウィルスの状況を踏まえて調整する。
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