研究課題
今年度は、Co2FeSi単結晶試料について軟X線共鳴非弾性X線散乱(RIXS)測定を行い、昨年度の予備実験の結果をもとに、FeのL端におけるRIXSスペクトルを、より入射エネルギーを細かく分割して詳細な測定を行った。RIXSは、内殻電子を共鳴励起させ、励起状態が緩和する過程で発生する散乱X線を分光することで、フェルミ面近傍の部分状態密度(DOS)を反映するようなスペクトルが得られる。入射エネルギーを選ぶことによって特定の元素の電子を励起させることができ、さらには、強磁性体では電子状態が交換分裂をしているため、左右円偏光によってスペクトル強度に差分が生じる(磁気円二色性:MCD)。よって、ハーフメタルであれば、フェルミ面直上の非占有状態から占有状態、そして終状態への緩和において、片側のバンドからだけに寄るスペクトルが得られることになる。FeのL3端において明瞭なRIXS-MCDスペクトトルが観測された。特に、入射エネルギーhv = 707 eV近傍で得られるスペクトルでは、Energy Loss=0に観測される弾性散乱より非弾性散乱成分が連続的に繋がる様子が観測された。これは、フェルミ面上にFe-3dの比較的大きなDOSが存在することを示唆しており、電子相関を取入れない一般化勾配近似(GGA)法によるバンド構造を基にした計算スペクトルで、その性状がよく再現されることが分かった。ハーフメタル型電子状態を有するホイスラー合金のRIXS-MCDにおける系統的な実験研究と計算スペクトルとの比較・検討により、フェルミ面近傍のDOSに関して詳細な議論が可能であることが本研究課題で明らかになった。本合金系の電子状態観測にRIXS測定が非常に有効であることから、今後とも関連研究を継続していくことが非常に重要である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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