研究実績の概要 |
昨年度に引き続いて、Bi-Sb系とPb-(Bi,Sb)-Te系のトポロジカル絶縁体(TI)について研究を進めた。Bi-Sb系については昨年度までに転位伝導の直接計測が可能なμmサイズの試料を用いた電気伝導測定に成功した。本年度は転位密度の異なる試料を切り出して電気伝導測定を行い、低温域の伝導度が転位密度に依存することを明らかにした。Landauer-Buttikerの式を用いて解析を行ったところ、そのような電気伝導度の転位密度依存性が転位伝導に起因することが明らかとなった。 Pb-(Bi,Sb)-Te系については、昨年度に引き続き、Se添加によるバルク絶縁性の向上をめざした。この系では、すでに我々の研究により2Kで180mΩcm程度のバルク絶縁性が得られているが、さらに高いバルク絶縁性の試料が得られれば、転位伝導をより明確に示すことができるはずである。また、従来のTIの表面伝導の研究においても、高いバルク絶縁性の試料が不可欠である。今までに十分なバルク絶縁性を示す試料は、Bi-Sb-Te系、Bi-Sb-Te-Se系など少数に限られており、新たにPb-(Bi,Sb)-Te系で高いバルク絶縁性を示す試料が得られればTIの研究分野で一つのブレークスルーとなり得る。本年度は、Sb量、Se量を変えた試料を多数作製し、電気伝導測定を行った。幾つかの試料で電気抵抗率の温度依存性が負の傾きをもった絶縁性が観測されたが、Se未添加における抵抗率の最高値を超えるものは今のところ得られていない。 Pb-(Bi,Sb)-Te系については、薄片状試料を用いた表面伝導の研究も進めた。2Kで180mΩcm程度の絶縁性を示す試料をスコッチテープ法で薄片化し、電気伝導度の温度依存性と磁気抵抗を測定した。表面2次元電子の弱反局在、およびShuvnikov-de Haas振動が観測された。
|