本研究では,伝導電子が強散乱極限にある熱電半導体において,化学ポテンシャル近傍の電子構造を不純物準位を用いて建設的に変調することで,熱電性能を飛躍的に向上させることを目指した.Si-Ge系材料では,化学ポテンシャルが伝導帯に存在する条件下において,1 at.%のFe置換により熱電性能が著しく向上することを見出した.また,化学ポテンシャルが価電子帯に存在する条件下では,1 at.%程度のAuあるいはNiの添加により性能が向上することを示した.銀カルコゲナイドなどでも同様の効果を確認した.本研究により,熱電材料を高性能化するための新しい指針が構築・確認された.
|