研究課題
磁気冷凍への応用が有望視されているLa(Fe,Si)13H 磁気熱量材料において、水素は動作温度を室温近傍に制御するために不可欠である。しかし、熱量効果の源で ある磁気1次転移の現れる強磁性-常磁性の2相共存状態において、当初は両者の水素濃度が等しくとも、やがて常磁性相から強磁性相に水素が移動し、濃度が異 なる2相にスプリットするため、動作温度が試料中で分布してしまう。この“スプリット現象”は、磁性に依存した異常拡散(up-hill拡散)であり、水素原子の 化 学ポテンシャルと磁気との関係など、その学理は全く不明である。 本年度は、スプリット安定化のためにLaサイトを置換したCeおよびPrについてスプリット現象に元素依存した差が観測されたので検討を行った。スプリット抑制のために水素濃度を最高濃度にして水素サイトを完全占有するが、その影響で動作温度が常に室温以上に上昇してしまうが、冷凍目的でこの温度を室温あるいはそれ以下にするために、Laサイトを元素半径の小さなCeあるいはPrで部分置換する。これは、いわゆる化学圧力による負の圧力効果として、物理的には磁気体積効果の延長で理解できる。ところが、水素濃度を最高値より少しだけ少なくしてスプリットを生じる条件に持っていくと、スプリット現象にも両元素の差が現れることがわかった。この要因として、希土類種に応じた磁性の変化によって、水素一定侵入量あたりの自由エネルギー(の磁気項)に差が生じるためであり、これが化学ポテンシャルに反映されて異常拡散の度合いの差となって現れると説明される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Applied Physics
巻: 127 ページ: 123902~123902
10.1063/5.0002220