研究課題
金属系超伝導体最高の臨界温度と高い上部臨界磁場をもつMgB2は、ヘリウム温度(4.2 K)よりも高温での応用が可能な超伝導材料の一つとして注目されている。超伝導バルクとしての応用を考えた場合、MgB2は粒界弱結合の影響がなく、無配向多結晶体であっても巨視的な超伝導電流を得やすいため、多結晶形態のバルクに高磁場を捕捉することが期待できる。また、捕捉磁場の空間的・時間的均一性にも優れる。一方で、反応時に空隙や不純物が生じるため、これらの低減による捕捉磁場強度の向上が課題となっている。そこで本研究では、高密度かつ高純度な大型MgB2バルク体の新しい作製法を開発することを目指し、マグネシウム気相輸送法(MVT: Mg Vapor Transport method)を検討した。MgB2バルク体の前駆体となる円盤状ホウ素ペレットとマグネシウム源とを分離して配置し、マグネシウム源から蒸発したマグネシウム蒸気を多孔隔壁を介してホウ素部に輸送、拡散、反応させるMVT法を開発し、直径20 mm、厚み2 mmの円盤状MgB2バルク体を得た。MVT法により作製したMgB2バルク体の充填率は従来のin situ法と比較して約1.6倍高く、20 Kにおける臨界電流密度は2倍以上向上した。円盤状バルク体を冷凍機冷却下において静磁場着磁後、ホール素子によりバルク表面中心の捕捉磁場を評価したところ、バルク表面で1 Tを上回る磁場を捕捉し、温度の上昇とともに捕捉磁場は減少した。バルクの両面での捕捉磁場の差は数%程度であり、この結果は循環電流の均一性が良好であることが示唆された。MVT 法によるMgB2相と微細組織の生成過程についての知見を得るため、作製したMgB2バルク体の微細組織と化学組成分布の評価を行ったところ、MgB4等の反応中間相が相・組織生成に関与していることを示唆するデータが得られた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Superconductor Science and Technology
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