研究課題/領域番号 |
18H01703
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
保科 拓也 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80509399)
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研究分担者 |
鶴見 敬章 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70188647)
武田 博明 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00324971)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 誘電体 / リチウムイオン伝導体 / テラヘルツ計測 / ミリ波・サブミリ波 / イオンダイナミクス |
研究実績の概要 |
超スマート社会や持続可能なエネルギー社会の実現に向けて,セラミックコンデンサや固体電池への期待がますます高まっている.これらに用いられる材料の誘電特性あるいはイオン導電性の起源を担っているのは外部電場によるイオンの振動あるいは移動であり,これらの物性を統一的に扱う学問体系の構築が重要である.本研究では,テラヘルツ分光エリプソメータシステムを構築し,ミリ波~テラヘルツ波帯域での複素誘電率測定を可能にする.また,得られる実測データを分子動力学計算によって再現することで,誘電特性やイオン導電性の起源となるイオンダイナミクスを理解する. 該当年度は、テラヘルツ分光エリプソメータシステムを用いて、チタン酸バリウム系強誘電体の複素誘電率をサブテラヘルツ~テラヘルツの領域で測定した.これによって,強誘電性ソフトモードや秩序・無秩序的な分極揺らぎが低周波数の誘電率にどれだけ寄与しているのか定量的に明らかになった.また,ソフトモードと分極揺らぎのカップリングについて議論し,それらの相互作用が大きな誘電率と深く関わることを確かめた. 一方,リチウムイオン伝導体の複素誘電率もmHz~THzの帯域で測定し,イオンダイナミクスを議論した.該当年度に対象物質として選択したのはLiTaO3-SrTiO3系試料であり、同系ではSlaterモードと呼ばれるフォノンモードとLiイオンの移動が協奏的なダイナミクスとして捉えられることを明らかにした.これまでにイオン伝導とフォノンの協奏的作用について実証した例はほとんど存在せず,固体イオニクスの発展に貢献しうる新たな知見であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
該当年度予定していたチタン酸バリウム系強誘電体およびLiTaO3-SrTiO3系試料のテラヘルツ帯域の誘電特性評価を行い,それぞれで新しい知見を得ている.本研究で目指している測定技術や計算技術の向上という点でも確実に進歩しており,研究計画は順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,テラヘルツ分光エリプソメータシステムを用いて,誘電体あるいはイオン伝導体のミリ波~テラヘルツ波帯域の複素誘電率を測定し,それぞれのイオンダイナミクスを明らかにする.誘電体に関する研究では,鉛系リラクサー強誘電体のテラヘルツ誘電特性を測定し,誘電特性の定量的理解を目指す.チタン酸バリウム系,チタン酸ストロンチウム系に関しては,格子欠陥の導入によってイオン分極や双極子分極がどのように変化するのか明らかにする.また,グレインサイズの異なるチタン酸バリウムセラミックスを作製し,誘電率がグレインサイズによって変化する「グレインサイズ効果」について検討する. 一方,リチウムイオン伝導体のテラヘルツ測定や解析も進める.リチウムイオン伝導と格子振動が相互に影響を及ぼすことを測定と計算から明らかにする.LiTaO3系およびLi7La3Zr2O12系セラミックスを対象とし,リチウムイオン伝導度の違いによって,フォノンが変化するのか調査する.特にこれらの物質の組成や温度を変化させた際にイオン伝導度が大きく変わるため,その影響を明らかにする. 得られた結果をとりまとめ学会発表や論文発表を行うことで国内外に成果を発信する
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