研究実績の概要 |
本年度は主要な研究として、代表的な強誘電体であるチタン酸バリウム(BaTiO3)について電場を印加した状態での原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を行い、格子定数の変化を原子分解能で直接測定した。通常のバルク体の性質からは予想されない巨大な格子定数の変化が観測された。成果は論文として公表され(Sato et al., Phys. Status Solidi, Rapid Research Letters, 14, 1900488, 2020)た。その成果の学術的なレベルの高さが認められ、同論文はPhys. Status Solidi, Rapid Research Letters誌2020年1月号のFront Coverに選ばれた。 また,上記成果に係る研究の途中過程において、原子分解能STEM像のひずみを補正する新手法「2段階アフィン変換法」を開発した(in Supporting Information, Sato et al., Phys. Status Solidi, Rapid Research Letters, 14, 1900488, 2020)。同手法を用いると従来は1~2%の誤差が含まれていた格子定数の確度が大きく改善される。本手法についての深化を継続的に進めており、STEM観察時における重要な実験パラメータの1つであるスキャン回転角度がSTEM像の歪みに大きく影響を与えていることを明らかにした(Fujinaka et al., J. Mater. Sci., accepted)。これは格子定数の正確測定時はスキャン回転角度を固定した方が良いという重要な知見を与えている。さらに、直行方向にスキャンした像を平均化処理する際に「2段階アフィン変換法」を組み合わせて、像質の大きな改善と高確度格子定数測定を両立する新手法の開発も進んでいる。
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