研究実績の概要 |
本年度は代表的な強誘電体/圧電体材料である(1-x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-xPbTiO3 (PMN-xPT, x = 0 および 0.32)について、光照射時の電気物性測定および電場印加時のドメイン応答その場観察、ならびに高精度原子位置測定をそれぞれ行った。光照射実験ならびに電場印加には本研究にて開発された「光照射・電場印加二軸傾斜電子顕微鏡試料ホルダー」を使用した。また、高精度原子位置測定においては本研究の進行過程で開発された「二段階アフィン変換法」を用いた。 二段階アフィン変換法において正確な格子定数測定を行うために実験的に重要なキーポイントが走査透過型電子顕微鏡(STEM)像を取得する際の走査回転角度であることを突き止め、成果を論文に公表した。(Fujinaka et al., J. Mater. Sci., 55,8123 (2020).)この論文の内容は高く評価され、J. Mater. Sci.誌 The 2020 Cahn PrizeのJuly Finalistに選出された(https://www.springer.com/gp/materials/cahn-prize-2020)。また、PMN-0.32PTにおいては、光照射時に起電力が上昇することが突き止められた。加えて、PMN-0.32PTではナノスケールのラメラ状ドメイン構造が鉛イオンの変位と直接関連していることを明らかにした他、PMN-0PT、すなわち、PMNでは、等方的な数ナノメートル程度の大きさのナノドメインと鉛イオンの変位が直接関連していることを明らかにしたほか、非常に微細なラメラ状ナノドメインも存在していることを突き止めた。(Sato et al., J. Mater. Sci., 56,1621 (2021).)
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