研究課題/領域番号 |
18H01714
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
正井 博和 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10451543)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ガラス / 弾性特性 / 構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、種々の酸化物ガラスを対象として、詳細な構造解析と物性評価をおこなうことにより、酸化物ガラスの弾性特性とネットワーク構造の相関を明らかにし、構造に基づいた酸化物ガラスの弾性特性の体系化を確立することを目的とする。研究のアプローチとしては、従来行われている短距離の構造解析に加えて、放射光・中性子を用いた構造解析や非弾性光散乱を用いて、やや長い距離(中距離)レンジの構造を定量的に評価し、得られた詳細な電子状態・構造評価に基づきガラスネットワークの3次元化を試みる。 初年度は、本研究の遂行に必要な環境の整備、および、基礎実験をおこなった。基礎実験の一例として、一般的な溶融法で作製したリン酸塩ガラスと液相から作製したリン酸塩ガラスに関する物性評価が挙げられる。研究室で実施した熱物性だけでなく、放射光施設を用いた解析により、水酸基の存在に依存して、これらのネットワーク構造が大きく異なっていることを見出した。また、幾つかのリン酸塩ガラスにおいて、組成、弾性率、化学的耐久性の評価を行うことにより、それぞれの支配因子を議論する必要性を見出した。更に、X線を照射したガラスを用いて紫外領域における欠陥がアニールによって変化し、結果として発光特性が影響されることを明らかにした。このような知見は、今後の論文化、あるいは、研究遂行にとって有用な指針を与えるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、科研費Bの初年度として、研究を遂行する基盤環境の整備に注力した。具体的には、酸化物ガラスにおける構造を評価する装置として、陽電子寿命測定装置を購入して、材料と物性値との相関の調査を始めた段階である。ラマンや密度、あるいは弾性率といった従来用いられている評価方法との差異、相関性など、非常に多くのパラメータがあり、次年度以降に基盤的知見を蓄えていく必要があると考えている。空隙を用いた酸化物ガラスのカテゴリー化は世界的に見ても未だあまり進んでおらず、世界に先駆けて実施する価値があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
測定評価に向けた体制が整備されたので、多様な酸化物ガラス、あるいは、種々の方法で作製したガラスにおける弾性特性と物性との相関を調査する。また、導入した評価機器を用いて、ガラス中の自由体積の評価を行う予定である。一方、他分野の研究者とも協力して、研究の幅を広げることにより、単に弾性特性にとどまらない、他の物性との相関を調査する。
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