本研究では、これまで実用化されてこなかったC/Cコンポジットに耐酸化性被膜を形成し、革新的に高い耐用温度(約1300℃)を有する、超軽量・超耐熱材料を創成することを目標とした。本研究対象をガスタービン用耐熱材料に応用することで、現行材料のNi基超合金と比べ、火力発電の発電効率の抜本的な改善が期待される。具体的な実施項目としては、溶融塩中でのイオンの輸送速度と電極反応速度、電極内の原子の拡散速度、電解諸条件が被膜の機械的・化学的特性に与える影響を研究し、溶融塩電解表面改質でC/Cコンポジット表面を珪化することでSiC被膜を形成することとした。特に、パルス電解法を用いて、従来法では困難であったマイクロクラック内のSi析出、充填、微細孔封止を行うことを目指した。 これまで、溶融塩中のSiイオンの輸送速度に比較して、固体中のSiの拡散速度が極度に遅いことが確認されたため、溶融塩中からのSiとCの共析を試みた。様々な条件を試みたが、Cのみ、あるいは、Siのみは析出したが、SiCとして同時析出させることは難しいことが分かった。そこで、基板である炭素材を改質することで、Siの拡散を促進させることを狙った。具体的には、C/Cコンポジット基板を、大気下で弱酸化させ、表面近傍のCマトリックスを燃焼除去した。その空隙に、溶媒に分散させた黒鉛粉末を導入し、密度の低いC領域を形成した。こうして作製した改質C/Cコンポジット基板に電解還元拡散法を適用したところ、表面から60~70 micron の深さまでSiCを形成することができた。
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