研究課題/領域番号 |
18H01717
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有田 稔彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50423033)
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研究分担者 |
増原 陽人 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (30375167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RAFT重合 / 粒子共存制御ラジカル重合 / RAFT試薬 / コアーシェル型ハイブリッドナノ粒子 / プロトン伝導 |
研究実績の概要 |
本研究は、総合性能でNafionに替わる電解質膜の開発を目的として実施した。実施内容として、独自手法により、表面に2次元プロトン伝導経路を付与した機能性フィラーの作製を試み、このフィラーを多点接触させることにより、3次元プロトン伝導チャンネルを構築し、より安価で大量生産可能な固体高分子電解質膜の設計・実証に取り組んだものである。これまでの研究では、Vinylphosphonic acidに適合するRAFT試薬である、xanthate型CTA (X1 : O-ethyl-S-(1-ethoxycarbonyl) ethyldithiocarbonate) を合成し、これを用いることで、有機溶媒中でのPolyvinylphosphonic acid (PVPA) の合成に成功した。さらに、粒子共存制御ラジカル重合法を用いることで、シリカナノ粒子表面にPVPAを被覆した、機能性フィラーの作製を達成した。作製した粒子は、再表面に疎水性ポリマーを被覆することで、10-2 S/cmオーダーの高いプロトン伝導性と、加湿環境下での繰り返し特性を有するハイブリッドナノ粒子の作製を実現した。ここでは、Nafionに匹敵する性能実現のため、さらなるプロトン伝導性能の向上が見込めるセルロースナノ結晶 (CNC) を用いたコア-シェル型ハイブリッドナノ粒子の作製を試みた。粒子共存制御ラジカル重合法を用いて作製した粒子は、Nafionに匹敵する10-1 S/cmオーダーの高プロトン伝導性能を発現し、既存のハイブリッドナノ粒子の性能向上を実現した。以上、顕著な成果を収め、期待通りに研究が進展したと云える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
さらなる高性能化のため、プロトン伝導度の底上げを目的として、高プロトン伝導性の発現に着手した。これまでにシリカナノ粒子をコアとして、ハイブリッドナノ粒子を作製してきたが、ここでは高アスペクト比による粒子同士の接触点の増加が見込めるCNCをコア粒子に選定した。RAFT試薬にX1を用い、粒子共存制御ラジカル重合法によって、PVPAを被覆したコア-シェル型ハイブリッドナノ粒子を作製した。FT-IR、TGA等の各種測定によりCNC表面へのPVPAの被覆を確認した。これにより、シリカナノ粒子同様、CNCにおいても粒子共存制御ラジカル重合法が応用可能であることを見出した。 作製した粒子 (CNC@X1-PVPA) は、20度から60度の温度域において、Nafioに匹敵する非常に高いプロトン伝導性 (3.8 × 10-1 - 4.9 × 10-1 S/cm、20 - 60度、98% RH) の発現を達成した。また、シリカナノ粒子の系同様、180度程度までの耐熱性を確認した。これにより、耐熱性を低下させることなく、ハイブリッドナノ粒子のプロトン伝導性能向上を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討から、CNC表面上への最適なPVPA被覆条件を明らかにしてきた。令和2年度は、実際の運用環境下での動作を目指し、固体高分子電解質膜としての実用を見据えた、電解質膜の成膜条件を確立する。 【固体高分子電解質膜の作製】 バインダー樹脂の選定を行い、実用化を鑑みた固体高分子電解質膜の成膜条件を確立する。CNC@X1-PVPAをpolycarbonate等のバインダー樹脂と混錬し、熱プレスを行うことでフレキシブルな電解質膜を作製する。作製した電解質膜は低・高加湿の両環境下、交流インピーダンス測定にてプロトン伝導度を評価する。ガスバリア性等の物性評価は、実際の運用条件化での耐久性に影響するため、プロトン伝導性能を失わず、膜強度を底上げできる粒子とバインダー樹脂の混合比を明らかにする。
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