研究課題/領域番号 |
18H01719
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
辻村 清也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30362429)
|
研究分担者 |
杉本 華幸 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60529527)
白木 賢太郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90334797)
藤田 恭子 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (90447508)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 酸化還元酵素 / 電解質 / 安定化 / 多孔質材料 |
研究実績の概要 |
本年度において、FAD依存性グルコース脱水素酵素の安定性の向上にむけた検討を行い、水の構造形成を促し塩析させる作用の強いコスモトロピックなアニオンとカチオン、カオトロピックなアニオンとカチオンの組み合わせの塩を用いた。コスモトロピックアニオンとコスモトロピックカチオンによって、酵素の安定性の向上が達成された。電解質濃度に対する依存性も観測された。コスモトロピックカチオンの安定化は一般の酵素に対する報告とは異なり、その理由は今後明らかにしていく。ビリルビンオキシダーゼを用いた場合でも同様の傾向が観測された。これまで研究代表者が開発をしてきた構造が制御された酸化マグネシウムを鋳型として作製された細孔構造が5-200nmで制御された多孔質炭素を利用しその中に酵素を固定化し、その安定性工法が細孔サイズに依存性するかどうかを検討した。細孔サイズが大きいと、サイズによる酵素の安定化は観測されなかった。炭素の表面を化学的に改質した場合でも酵素の固定化量および安定性に大きな変化は観測されなかった。ただ、ランダムな細孔を有する電極よりも、細孔サイズを制御した電極において高い安定性は確認できており、酵素の分布の均一性は重要な因子であることがあきらかになった。この3Dナノ電極上に固定化することで酵素が1年間以上室温でその活性を保つことも明らかになり、ナノ構造およびその内部環境を制御することは酵素の安定性向上に有益でありことは明らかになった。微量の炭素微粒子を水晶振動子金基板上に修飾し,電気化学水晶振動子マイクロバランス法により酵素の吸着過程(速度論)と電気化学特性をin situで酵素吸着量と電流値(=電極上での酵素活性)の関係を調べ、電極電位の酵素吸着に及ぼす影響、さらには酵素の電極触媒活性への影響を報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究ミーティングを行い、共同研究は問題なく開始でき、すでに一部研究論文を発表できている。本アイデアをもとにした関連研究(多孔質炭素を積極的に活用したデバイス開発)についても前倒しで研究成果が得られている。中性溶液における電解質の特性を理解したデバイスの開発、さらには、酵素以外の分野への展開の可能性も見えてきている。国内外の共同研究も活発になってきた。
|
今後の研究の推進方策 |
細孔内での酵素の吸着特性を様々なアプローチで検討し,電気化学測定による活性測定の結果を照らし併せ,水,酵素,界面,電解質の4者の相互作用と酵素の活性,酵素安定性,吸着特性の関係性を定量的に議論する.新規高分子型電解質(あるいは表面修飾電解質)を開発し,多孔質材料内に酵素と電解質溶液配備した反応系を構築し,デバイス応用に展開する.2019年度の成果を発展させて細孔に酵素が含まれた状態での示差走査熱量測定あるいは等温滴定熱量測定を行い,酵素と多孔質材料との相互作用を評価する.あわせて高塩濃度溶液での酵素活性測定(速度定数),酵素特性(溶解度,安定性,酵素間の相互作用など)を解析する.特定の塩の添加により変化する各種吸収スペクトルの差より,酵素の周辺の水和水に及ぼす電解質効果,pHおよび温度依存性を検討する.特異的な電解質共存下でのサイクリックボルタンメトリや定電位電解,交流インピーダンス測定により界面酵素反応と共役した電気化学応答波形解析を行い,多孔質炭素電極内での酵素反応さらには様々な環境因子の依存する失活速度(kr)の温度依存性についてを検証する.従来の酵素-ナノ空間,あるいは酵素―電解質(添加材)の2次元的材料開発でなく,3者の相互作用を考慮した新規材料開発指針を打ち出し,生体適合型電解質,特に高分子(高分子型電解質)の開発につなげる.
|