研究課題/領域番号 |
18H01724
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
小舟 正文 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90240960)
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研究分担者 |
神田 健介 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (20446735)
菊池 丈幸 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (50316048)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マルチフェロイクス / 反応性イオンエッチング / MOCVD法 / マイクロピラー型構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、高温スパッタ法を用いてNb:TiO2(101)基板上にa軸配向、Pt(100)/MgO(100)基板上にc軸配向(Bi3.25Nd0.65Eu0.10)Ti3O12(BNEuT)薄膜を作製した。反応性イオンエッチング法により、前者を[001]方向に沿って2-5μmピッチ間隔でマイクロプレート構造体に、後者をマイクロロッド構造体に微細加工した。2種類の構造体の空隙にCoFe2O4(CFO)粒子を堆積させて、マイクロピラー型構造のマルチフェロイック複合体を作製した。CFO堆積法には、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法を採用した。得られた研究成果は以下の通りである。 (1) MOCVD法により5μmピッチ、550℃、90-150minの条件で、CFO/BNEuT(h00)複合体薄膜を作製した。得られたCFOは逆スピネル型構造をもつCFO単相を示し、多結晶状態であった。磁化-磁場(M-H)特性は、明瞭な強磁性 [残留磁化(面内)Mr=23-26emu/g及び保磁力(面内)Hc=0.9-1.1kOe]を示した。分極-電界(P-E)特性は、ややリーキィな強誘電性を示した。これより、至適な成膜時間は120minであることを見出した。 (2) MOCVD法により5μmピッチ、450-600℃、140minの条件で、CFO/BNEuT(00l)複合体薄膜を作製した。得られたCFOは(1)と同様であった。M-H特性は、明瞭な強磁性 [Mr=44-49emu/g及びHc=692-1012Oe]を示した。P-E特性は、わずかにリーキィな強誘電性を示した。これは、CFOのFe/Co組成比が2以下(1.88-1.99)であり、CoⅡFe2ⅢO4とCoⅡCoⅢFeⅢO4との混合状態にあることから、このリーク挙動はCoⅡ-CoⅢ間の正孔をキャリヤとするホッピング伝導によると結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、強誘電体テンプレートにはa軸配向エピタキシャルBNEuT薄膜をRIE加工したマイクロプレート構造体のみを使用する予定であったが、同組成でc軸配向エピタキシャル膜の合成にも成功したため、c軸配向膜を加工して形状の異なるマイクロロッド構造体も作製して、これもマイクロピラー材として複合化することを検討した。CFO成膜法としてMOCVD法を予定していましたが、これの成膜条件ならびに成膜技術をほぼ確立できたので、非水系ゾルゲル法も併せて検討を行った。その結果、現在までのところ、CFO粒成長、充填量及び磁気特性においてMOCVD法の方が非水系ゾルゲル法よりも格段にすぐれることを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は電気磁気効果、特に磁歪-電気分極制御の性能指数である電気磁気電圧係数(αE)の評価と性能向上のための研究を推進させる。CFO粒子径と磁歪効果の関係を明らかにする。具体的には、MOCVDで作製したas-grown CFOの平均粒子径は大きなもので高々約500 nmであった。また、CFO粒子サイズのほかに強誘電体の分域壁と強磁性体の磁壁間の結合強度も十分とは言えない。磁場印加によりCFOに弾性変形を生じさせても、上記の分域壁/磁壁間の結合が破壊されず繰り返し安定したエネルギー変換を行えることが重要である。そこで、MOCVD法以外に有機金属分解法も併せてCFO/BNEuT複合体薄膜の作製を検討する。作製した複合体薄膜を超高純度N2雰囲気中で600-900℃、10hの条件でポストアニールすることで磁歪-電気分極制御が可能なCFO層と強固なBNEuT/CFO結合を構築することを目指す。
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