研究課題/領域番号 |
18H01725
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
岸 肇 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (60347523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 複合材料 / フィラー / エポキシ / 相構造 / 界面 |
研究実績の概要 |
共連続構造を有するネットワークポリマーアロイ中に機能性フィラーが分散された複合材中で、フィラーを異種ポリマー成分が接する相分離界面に自己組織的に配列させるための主導原理(熱力学平衡論・速度論等)構築を目的とした研究である。ネットワークポリマーアロイ共連続構造をテンプレートとしフィラーを自己組織的に配列させる原理と具体的方法を明らかにできれば、極少量フィラーによりチャンネル形成した機能性複合材創出に繋がる。 反応誘起型相分離によりネットワークポリマーアロイ中に生じるマイクロメートルサイズの相構造は、ブロック共重合体をネットワークポリマーアロイの1成分とした自己組織型ナノ相構造と比較して反応速度論の影響を受けやすく、昇温速度が異なるだけで同組成であっても相構造サイズや形態が大きく変化することを証明できた。また、反応誘起型相分離を生じるネットワークポリマーアロイにカーボンフィラーを加えた場合、フィラー未添加のポリマーアロイの場合と比較して相分離構造周期が細かくなることがわかった。前年度研究において、フィラー界面配列推進力となるフィラー表面/樹脂成分間の親和性(熱力学的平衡論因子)と、樹脂ゲル化による構造変化凍結(速度論因子)との競争優位性が、複合材の構造決定に関わると考えられたが、今年度の上記結果も反応誘起型相分離構造における粘度因子(分子運動性、速度論)の重要性を示すものである。 他方、自己組織的ミセル形成によりナノ共連続構造を生じる芳香族アミン硬化エポキシ/ブロック共重合体ポリマーアロイ中でin-situ還元反応にてナノ銀フィラーを形成した複合材では、還元剤かつ表面処理剤となるアルキルアミンのアルキル鎖長により、ナノ銀フィラーの凝集性・配列性が変化する結果を得た。この場合、フィラー表面/樹脂成分間の親和性(熱力学的平衡論因子)が複合材の最終構造に優位に働いたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応誘起型相分離によりネットワークポリマーアロイ中に生じるマイクロメートルサイズの相構造は、ブロック共重合体をネットワークポリマーアロイの1成分とした自己組織型ナノ相構造と比較して反応速度論の影響を受けやすく、昇温速度が異なるだけで同組成であっても相構造サイズや形態が大きく変化することを証明できた。また、反応誘起型相分離を生じるネットワークポリマーアロイにカーボンフィラーを加えた場合、フィラー未添加のポリマーアロイの場合と比較して相分離構造周期が細かくなることがわかり、反応誘起型相分離構造における粘度因子(分子運動性、速度論)の重要性を示すことができた。 他方、自己組織的ミセル形成によりナノ共連続構造を生じる芳香族アミン硬化エポキシ/ブロック共重合体ポリマーアロイ中でin-situナノ銀フィラーを形成した複合材では、還元剤かつ表面処理剤となるアルキルアミンのアルキル鎖長により、ナノ銀フィラーの凝集性・配列性が変化することを見出した。フィラー表面/樹脂成分間の親和性(熱力学的平衡論因子)が自己組織型ネットワークポリマーアロイ複合材の構造決定に優位に働くことを示唆する結果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
ネットワークポリマーアロイマトリックス中にフィ ラーをブレンドした複合材において、フィラー存在場所や配列構造とフィラー表面処理や高分子化・ネットワーク化反応速度の関係を明らかに し、また相分離構造中の組成分配との関係も明確にすることを令和2年度の目的とする。 具体的手法として、①フィラー表面処理剤として種々のシランカップリング剤や脂肪族アミン等を用いフィラー表面のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の3成分(分散力、極性力、水素結合力)を変化させ、マトリックスポリマー成分との界面化学(平衡論)を検討する。②ネットワ ークポリマーの高分子化反応進行に伴う相分離過程・フィラー存在位置や配列構造形成過程の可視化に取り組み、動力学(速度論)の影響を明らかにする。③ネットワークポリマーアロイのサイズ・形態と無機フィラーサイズの組み合わせを変化させ、複合材のフィラー分散・配列構造と機能性の関係を明らかにする。 ネットワークポリマーアロイ共連続構造をテンプレートとしフィラーを自己組織的に配列させる原理と具体的方法を明らかにできれば、極少量フィラーによりチャンネル形成した機能性複合材創出に繋がると期待する。
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