共連続構造を有するネットワークポリマーアロイ中に機能性フィラーを分散させた複合材において、当該フィラーを異種ポリマー成分の接する相分離界面近傍に自己組織的に配列させるための主導原理(熱力学平衡論・速度論)の構築を目指した研究である。ネットワークポリマーアロイ共連続構造をテンプレートとし、機能性フィラーを自己組織的に配列させる主導原理と具体的支配因子・方法論を明らかにできれば、極少量フィラーによりチャンネル形成した機能性複合材の創出に繋がるからである。 エポキシオリゴマーにメタクリルモノマーを溶解ブレンドし、メタクリルモノマーのラジカル重合後にエポキシオリゴマーのアニオン重合を生じさせる順序・経路において反応誘起型相分離ネットワークポリマーブレンドを作成できるが、重合前に予め銀フィラーを分散させておくと、硬化物中のマイナー成分にあたるメタクリルポリマーリッチ相に選択的に銀フィラーが配置され、比較的少量の銀フィラーにて導電性を発現する複合材が得られた。この銀フィラー表面にはミリスチン酸(脂肪酸)が被覆されている。エポキシリッチ相、メタクリルリッチ相および脂肪酸処理銀フィラーのハンセン溶解度パラメータ(HSP)を評価したところ、銀フィラーとメタクリルリッチ相とのHSP距離は銀フィラーとエポキシリッチ相とのHSP距離より短く、すなわち分子間力、水素結合力による親和性の強い相にフィラーが選択配置するという平衡論の考え方が成り立つことが知られた。 一方、エポキシオリゴマーにポリエーテルスルホンを溶解ブレンドし、無機フィラー共存下で芳香族アミン硬化させた場合は、上記のHSP距離の関係にてフィラー存在場所を必ずしも説明できないことが知られた。分子間力、極性、水素結合力以外の相互作用の存在もしくは構造形成時の速度論を加味する必要があることが示唆された。
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