研究課題/領域番号 |
18H01732
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒田 健介 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任教授 (00283408)
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研究分担者 |
土屋 周平 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20569785) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体親和性材料 / 表面改質 / 表面階層構造 / ウエットプロセス / 吸着 |
研究実績の概要 |
インプラント基材として,金属・合金,セラミックス焼結体,ポリマーを取り上げ,まず①材料ごとの親水化プロセスの最適化を行い,階層構造の下地を整備し,②その上に,単一物質として,イオンやポリペプチド,界面活性剤,タンパク質,薬剤などを吸着させるための条件最適化を行った.③工学的観点から,物質の吸着・脱離量や吸着・脱離速度などと材料表面の化学的特性の相関関係を明らかにし,④生体内・生体外の両面から評価することによって,細胞や細菌の接着・増殖に関する知見のみならず,生体反応についての知見も得て,⑤表面階層構造の持つどのような因子が生体反応に強い影響を与えるかについて検討した. これまでに,金属,セラミックス,ポリマーの基材の表面親水化プロセスの最適化は完了している.生体適合性に有効な表面官能基として,プロセスの相違はあるものの,水酸基やカルボキシル基の生成によるところが大きいことがわかった.表面を親水性に改質した金属,セラミックス,ポリマーに対して,イオンやポリペプチド,界面活性剤,タンパク質,薬剤など,一種類の物質を吸着させたインプラントの作製に成功し,抗菌性,骨伝導性,抗炎症性などの機能を創出できることを明らかにした.さらに,金属材料を用いて二種類の物質の吸着を進めたところ,二物質を順番(段階的)に吸着させるか,同時に吸着させるかによって,インプラント表面への吸着量,吸着速度が大きく異なることが明らかとなり,吸着に用いる水溶液中で既に二物質が会合した状態をとっていることが示唆された.また,タンパク質や薬剤の吸着には,それらの物質に含まれる官能基の電離状態が極めて大きな影響を与えることがわかった.さらに,この官能基の電離状態は,水溶液中での二物質の会合にも大きな影響を与えることも明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料の表面階層構造を厳密に構築するために必須となる材料表面の下地処理(親水化)は,全ての材料(金属,セラミックス,ポリマー)において完了した.その後,単一の各種機能性物質(イオン,たんぱく質,ポリペプチド,抗炎症薬)の表面吸着処理の最適化も完了し,工学的評価のみならず,一部は動物埋植評価まで完了している.金属基材を使用して,二種類の物質の吸着実験をほぼ完了している. 年度途中で分担者の退職があったものの,新たな分担者に参画いただくことによって,研究の遂行において特段の問題は生じない.
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今後の研究の推進方策 |
ポリエチレンやポリカーボネートなどのポリマー材料表面への複数の機能性物質(イオン,たんぱく質,ポリペプチド,抗炎症薬)の表面吸着処理ならびに動物埋植評価を継続する.ポリマー材料への複数物質の段階的吸着ならびに同時吸着実験を進め,金属材料において得られた結果と融合し,作製プロセスの最適化の観点だけでなく,複数物質の吸着メカニズムの推定や吸着物質の効能発現の観点からも生体内外評価を継続する.
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