研究実績の概要 |
複数の価数をとる遷移金属酸化物の中には、酸素量の変化を構造的に緩和し、組成によって連続的に結晶構造が変化する、マルチモルフを呈する物質群が存在する。本研究では結晶学的せん断構造と呼ばれる、面欠陥の周期配列を含む酸化物に着目し、酸素量の変化によって、ナノスケールの面欠陥の周期配列を制御する手法を確立することを目指している。また、バルク結晶中に含まれるナノスケールの周期構造による特異な構造物性、特に、熱伝導特性に関する知見を得ることを目的としている。 2018年度は、二酸化チタンを真空中で焼鈍することにより、酸素欠損を生じさせた結晶を作製し、その周期構造の評価を行った。ベルヌーイ法により作製されたルチル型二酸化チタン単結晶を真空中で1300℃, 24時間熱処理を施した。得られた結晶を透過電子顕微鏡法により観察した結果、ルチル構造の(132)に多数の面欠陥が含まれておりその周期は~3 nmであった。真空熱処理の時間を変化させることにより、酸素欠損量を変化させることができると考えられるため、真空熱処理によって二酸化チタンの面欠陥の周期を変化させ、マルチモルフ制御が可能であると考えられる。また、正方晶のルチル構造には等価な(132)が複数あるため、面欠陥の向きによって複数のバリアントが生じることが明らかとなった。また、得られた結晶の熱伝導率の評価を行う環境の構築も行っており、次年度以降マルチモルフィック酸化物の構造物性の評価を進める予定である。
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