研究課題/領域番号 |
18H01733
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原田 俊太 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 講師 (30612460)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シアー構造 / 面欠陥 / 格子振動 / コヒーレント界面 / マルチモルフィズム |
研究実績の概要 |
複数の価数をとる遷移金属酸化物の中には、酸素量の変化を構造的に緩和し、組成によって連続的に結晶構造が変化する、マルチモルフを呈する物質群が存在する。本研究では結晶学的せん断構造と呼ばれる、面欠陥の周期配列を含む酸化物に着目し、酸素量の変化によって、ナノスケールの面欠陥の周期配列を制御する手法を確立することを目指している。また、バルク結晶中に含まれるナノスケールの周期構造による特異な構造物性に関する知見を得ることを目的としている。 2019年度は、二酸化チタンを真空中で焼鈍することにより、酸素欠損を生じさせた結晶の周期構造の評価を行った。走査型透過電子顕微鏡法により観察した結果、ルチル構造の(132)に周期的な面欠陥が含まれておりその周期は2.9 nmであった。広範囲の観察結果から、面欠陥の周期の標準偏差は50 pm以下 (N = 173)と極めて小さいことが明らかとなった。また、走査型透過電子顕微鏡法による面欠陥の詳細な構造評価を行ったところ、面欠陥周期界面の完全性を評価したところ、界面粗さは5 pm以下となった。これらの値を基に周期界面のコヒーレンスを評価するために、鏡面反射パラメータ p(specularity parameter)を計算したところ、16 THz以下の振動に対してコヒーレンスな界面であることが明らかとなった。これはルチル型二酸化チタンにおける、ほとんど全ての格子振動に対してコヒーレントであることを示しており、熱伝導など格子振動が関わる物理的な性質に対して、波動の干渉により特異な効果が発現することが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酸化チタンのマルチモルフィズムを利用して、ナノスケール周期構造をピコスケールで制御することに成功しており、マルチモルフィズムに起因する特異な構造物性の発現が期待できることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度までに構築した熱物性評価装置を利用して、周期構造に起因する特異な構造物性の発現を確認する。
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