複数の価数をとる遷移金属酸化物の中には、酸素量の変化を構造的に緩和し、組成によって連続的に結晶構造が変化する、マルチモルフを呈する物質群が存在する。本研究では結晶学的せん断構造と呼ばれる、面欠陥の周期配列を含む酸化物に着目し、酸素量の変化によって、ナノスケールの面欠陥の周期配列をピコスケールの精度で制御する手法を確立した。また、バルク結晶中に含まれるナノスケールの周期構造によって発現する特異な構造物性を明らかにした。具体的には、面欠陥の密度に対して熱伝導率が単調に変化せず、最小値を有するというものであり、これは、熱伝導の波動的な側面をとらえた結果である。
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