研究実績の概要 |
「高強度」と「高延性・靭性」を兼ね備える構造材料の実現はすべての構造材料研究者が目指す究極の目標である.本研究では次世代の超耐熱構造材料の候補の一つである遷移金属シリサイド基共晶単結晶合金(共晶温度:1900~2020℃)の優れた高温強度を保持しつつ良好な破壊靭性を付与する方策として,合金添加による異相界面強度特性の最適化と組織の均質微細化を複合的に行う方法を提案し,その強靭化機構の妥当性と有効性を実験研究と理論的検討を相補的に行うことを通じて解明することを目的とし様々な基礎研究を行った. 令和2年度は前年度までに検討を行ってきたC40-(Nb,Mo)Si2/D8m-(Nb,Mo)5Si3共晶合金の微細組織解析,力学特性評価,変形組織解析を引き続き進め,得られた結果に基づき優先配向関係,安定界面構造,格子ミスフィットと室温破壊靱性,高温強度の相関についての考察を行った.さらに上記合金系への添加元素の影響について検討すべく複数の合金元素を添加した合金系について一方向凝固法材の作製ならびに微細構造や力学特性の調査も行った.さらに遷移金属シリサイド基共晶単結晶合金を構成する遷移金属ダイシリサイドおよび5:3シリサイドについて,単結晶マイクロピラー圧縮試験法による変形挙動の調査を行うとともに,第一原理計算による一般化積層欠陥エネルギー計算を通じた理論的検討から各構成相の変形機構解析を行い,当該共晶合金の変形機構の理解のために重要な基礎的知見を得た.
|