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2019 年度 実績報告書

結晶方位制御による超軽量bcc型Mg-Li合金高機能化の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 18H01736
研究機関大阪大学

研究代表者

萩原 幸司  大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10346182)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードMg合金 / 強度 / 組織制御 / 結晶方位依存性 / 社会基盤構造材料 / 生体材料
研究実績の概要

昨年度見出したMg-Li bcc合金単結晶への微量のAl添加による飛躍的な強度上昇について,その成果を論文発表するとともに,さらにその起源を明らかにすべく,変形組織のTEM観察等を進めた.この結果Alの添加により内部にスピノーダル分解に起因すると推察されるAl濃度変調が生じ,これに誘起されナノレベルのクラスター構造が形成されていることがTEM-SAED観察におけるエキストラスポット解析から示唆された.本合金の実用化を目指し,さらに多結晶体について圧縮・引張試験による力学特性検討を行ったが,この結果Al添加は飛躍的な強度上昇をもたらすものの,一方で同時に多結晶状態では著しい脆化を引き起こすことを見出した.この要因解明について現在さらに検討を進めているが,これを踏まえ,実用的観点からはβ単相合金を多結晶化するのではなく,延性相として期待されるhcpα相との複相化により,この脆性を克服する方策を新たに提案し,最終年度重点的に検討することとした.さらに本合金の弾性特性について外部研究者との新たな共同研究実施によりMg-Li二元系合金について調査し,大変興味深い成果を得た(共同研究という性質上,その詳細の記述はここでは伏せる.)今後,Al添加の影響等についても検討を進める予定である.
さらにMg-Li単結晶の溶解挙動評価としては,昨年度のMg-Li bcc単結晶の結果との比較検討を行うべく,本年度はMg-Li hcp単結晶について検討を進めた.この結果,Mg-Li hcp単結晶は純Mgと同様に溶解挙動が強い方位依存性を示すことが明らかとなった.しかし,溶解速度のLi濃度依存性については,当初の予測とは異なり,Li濃度の増加は単調な溶解速度の上昇をもたらさないことなどの興味深い知見が明らかとなり,今後その詳細についてさらに検討する必要がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

上述のように,当初の研究計画に従い,遅延なく,むしろ加速的に研究が着実に進捗しつつある.本研究により初めて明らかになった微量Al添加による劇的な強度上昇は,当初予想し得なかった驚くべき成果である.その証左として本現象を報告した論文は即座に受理され,発表に至った.この成果を踏まえ,さらに検討の幅を最終年度には二相合金系まで拡張することで,実用化まで見据えた合金開発特性評価を引き続き加速度的に進めていく.

今後の研究の推進方策

本年度は計画最終年度として,これまで2年間の成果を受け,bcc型Mg-Li単相単結晶の特性評価のみならず,hcp/bcc複相合金の特性評価を進めることで,最終的にbcc型Mg-Li合金の実用加速化実現のための指針を示すことを目指す.本年度の具体的な研究実施方針は以下の通りである
.
*Mg-Li二元系合金,およびこれに第三元素としてAl, Sc, Zn, Y,Ga etc.などを添加し,かつLi濃度を従来より低下させた各種bcc/hcp複相合金に着目し,組織,構成相体積率制御等を通じた力学特性改善策を検討する.*走査型電子顕微鏡(SEM)観察を通じた解析(EDS, EBSD)を通じ,複相合金中の界面構造,濃度分布,集合組織制御について検討する.*圧縮・引張試験,ならびにビッカース硬度試験による,複相合金の力学特性(強度,延性)評価を行い,各種組織学的パラメータ等と力学特性の相関を明らかにする*bcc型単結晶合金の特性についても,Al,Li濃度依存性をより精緻に評価することで,本研究により見出した異常な高強度発現メカニズムを解明する.*動電位分極測定・交流インピーダンス解析・水素発生量解析・溶出イオン量解析等を通じた生体疑似液中での溶解挙動の結晶方位依存性解明について,Mg-Li二元系からさらに拡張し,Al添加の効果について検討する.
これらを通じ,bcc型,およびbcc/hcp複相型Mg-Li基合金における,従来にない著しい高特性を発揮させるための最適組成,組織,結晶方位制御法の確立を実現する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Enhancement of plastic anisotropy and drastic increase in yield stress of Mg-Li single crystals by Al-addition followed by quenching2019

    • 著者名/発表者名
      K. Hagihara, K. Mori, T. Nakano
    • 雑誌名

      Scripta Materialia

      巻: 172 ページ: 93-97

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.scriptamat.2019.07.012

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ミルフィーユ構造を有するMg 基LPSO 相の塑性変形・強化機構,他材料への応用の可能性2020

    • 著者名/発表者名
      萩原幸司
    • 学会等名
      日本物理学会第75回年次大会
  • [学会発表] Al添加によるβ型Mg-Li合金の高強度化,α+β型二相合金への展開2019

    • 著者名/発表者名
      森啓太朗,萩原幸司,中野貴由
    • 学会等名
      日本金属学会2019年秋期(第165回)講演大会
  • [学会発表] 金属系ミルフィーユ構造とキンク変形2019

    • 著者名/発表者名
      萩原幸司
    • 学会等名
      日本軽金属学会 LPSO/MFS構造材料研究部会 第1回研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] マグネシウム合金の高強度発現機構の検討 - Mg/LPSO二相合金を例にして -2019

    • 著者名/発表者名
      萩原幸司
    • 学会等名
      2019年度 日本金属学会関東支部講習会 『高強度金属材料の機能発現機構―転位論の基礎から材料強度化まで―』
    • 招待講演
  • [学会発表] Mg 基長周期積層構造相を例にした金属におけるキンク変形,材料強化の可能性2019

    • 著者名/発表者名
      萩原幸司,中野貴由,山崎倫昭,河村能人
    • 学会等名
      2019年度繊維学会 年次大会
  • [備考] 大阪大学 材料組織制御工学領域研究室  HP (研究代表 萩原幸司 HP)

    • URL

      http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/mse8/

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公開日: 2021-01-27  

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