研究課題/領域番号 |
18H01738
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
李 海文 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (40400410)
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研究分担者 |
中島 裕典 九州大学, 工学研究院, 助教 (70432862)
池田 一貴 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (80451615)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水素化物 / 水素貯蔵 / イオン伝導 |
研究実績の概要 |
今年度では、LiBH4の水素放出およびイオン伝導特性におけるにおけるLiBF4の複合効果を詳しく評価解析した。LiBH4とLiBF4を所定の化学組成比にて混合した後、ボールミリングを行い、粉末X線およびFTIRより評価した結果、いずれの試料においても、出発原料のLiBH4とLiBF4の混合物(以下はLiBH4-LiBF4を示す)であることが分かった。これらの混合物を加熱すると、約100 ℃から水素(わずかな不純ガスB2H6を含む)の放出を伴い、反応し始めることが確認された。260 ℃で2 hの熱処理を施すと、Li2B12H12およびLiFの生成が確認された。熱処理後の試料において、LiBH4とLiBF4の化学組成比が3.8 : 1の場合において、Li2B12H12およびLiFの二相のみ(以下はLi2B12H12-LiFを示す)が確認された。また、Li2B12H12-LiF において、14 nm前後のLiFナノ粒子が非晶質のLi2B12H12に均一に分散することが電子顕微鏡観察より明らかになった。電気化学インピーダンス測定の結果から、LiBH4-LiBF4は単体のLiBH4とほぼ同様に、110 ℃付近で低温相から高温相への相変態に伴い、イオン伝導性は室温での10-8 S/cmから115 ℃での10-3 S/cmへ急激に増加することが確認された。LiBH4- LiBF4のイオン伝導性がLiBH4単体のそれよりわずかに低いことから、LiBF4の添加によるLiBH4のイオン伝導性の向上が確認されなかった。一方、Li2B12H12-LiFは単体のLi2B12H12より高いイオン伝導性が確認された。例えば、75 ℃でLi2B12H12-LiFとLi2B12H12のイオン伝導性がそれぞれ5.0×10-4 S/cmと3.1×10-4 S/cmであることが分かった。また、Li2B12H12-LiFの活性化エネルギーは0.5 eVで、超イオン伝導体の活性化エネルギーの典型値にも近いため、固体電解質としての可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LiBH4の水素放出およびイオン伝導特性におけるにおけるLiBF4の複合効果を詳細に評価解析し、LiBH4の水素放出反応におけるLiBF4の低温化効果を見出した。また、LiBH4-LiBF4の熱処理により得られたLi2B12H12-LiFのイオン伝導特性を詳細に評価解析し、ナノサイズLiFの分散によるLi2B12H12のイオン伝導性の向上効果が得られた。よって、今後の研究開発において重要な知見を得ることができたため、今年度の研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究分担者および国内外共同研究者との連携をより一層強化しながら、M(BxHy)n試料に対して、陽イオンまたは陰イオン置換や複合化などの最適化を行い、水素貯蔵特性、およびイオン伝導特性や電池特性などを詳細に評価解析することによって、機構解明および特性向上を行い、固体水素化物の水素貯蔵や電気化学応用への材料設計指針の構築を目指す。
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