本研究は、クリープ変形における亜粒界強化のメカニズムを明らかにすることを目的としている。これまで経験的な理解のみに留まっていた高温での亜粒界強化メカニズムについて、申請者が過去に行った研究結果から導き出した「亜粒界による抵抗をThermalな現象として取り扱う仮説」について、実験的検証と理論構築を加えて学理へと昇華させる。具体的には、すでにいくつかの実験結果が得られつつある既存フェライト系(マルテンサイト系)耐熱鋼について、固溶強化型合金の高温変形に関する基礎研究において確立された試験方法と理論的取扱いを応用して亜粒界による抵抗理論モデルの構築を行った。これまでの研究で、まず、超高精度単軸クリープ試験により10^-10 s^-1オーダーの極低速クリープ変形の測定に成功した。さらに、フェライト系耐熱鋼では高応力・高ひずみ速度域と低応力・低ひずみ速度域では最小ひずみ速度の応力依存性が異なることを短時間の超高精度単軸クリープ試験から明らかにした。また、この最小ひずみ速度の応力依存性の変曲点は材料の初期転位密度に依存しており、転位密度が高い材料ほど変曲点が高応力側にシフトすることが明らかになった。このことは転位密度によって決定される非熱的降伏応力を境にしてクリープ変形時の転位運動の様式が異なっていることを意味していると考えられる。また、超高精度クリープ試験法によって応力急変試験を行った結果、瞬間塑性ひずみ生じることが明らかとなり、フェライト系耐熱鋼は内部応力支配の変形挙動を示すことが明らかとなった。
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