研究課題
スマートフォンやモバイバル機器など小型電子機器用の通電接点部材には高強度-高導電性の銅合金の開発が求められている.当研究グループでは,時効硬化型Cu-Ti合金において過度に時効した試料(過時効材)を伸線加工した線材では,強度と導電率の双方で従来のピーク時効-伸線加工Cu-Ti合金線材の特性を上回ることを見出した.これは,過時効処理に伴い発達するセル状Cu/Cu4Ti積層組織を活用したものである.上記の研究成果を踏まえて,2018年度~2020年度では,過時効処理-強加工(伸線加工)プロセスにともなうCu-Ti-(Mg)合金、Cu-Ni-Al合金、Cu-In合金の組織変化と特性向上の機構を解明し,従来材の強度-導電性バランスを凌駕する銅合金線材を創製するための幾つかの指針を獲得した.昨2021年度は、銅合金の線材作製に関して獲得した知見を薄板材作製に展開したことが主な成果となる。具体的には,過時効したCu-Ti合金を圧下率97%以上冷間圧延したときの加工度にともなう強度,導電性および組織の変化を調べた.過時効材(板厚10 mm)の硬さは約150Hvであるが,冷間圧延するとともに増加して,加工度4.8(板厚0.1 mm)で320 Hv,引張強さ1200 MPaを超える.導電率は,加工度1.0(板厚3.6 mm)までは僅かに増加して,その後徐々に低下するが加工度4.8でも18%IACS以上を保つ.その結果,過時効材を強冷間圧延すると従来のピーク時効-強冷間圧延材よりも強度は10%ほど低いものの,導電率は3倍程度向上した板箔材が得られた.強冷間加工に伴う強化機構は伸線加工と類似点が多く、同様とみなせる.このように、過時効材を利用することで、高強度-高導電性銅合金の線材だけでなく薄板材も作製可能であることを実証し、強加工に付随する組織変化と特性発現の普遍性も確認できた.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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