研究実績の概要 |
β-SiAlON粉末のほか、引き続きα-Al2O3, TiN, ZrB2粉末を対象に、種々のAD条件により膜を基材上に成膜した。作製した膜を対象に結晶粒組織と集合組織を調べ、粒子の速度や基材加熱が与える効果を調べた。また、膜の力学特性や耐摩耗性についてα-Al2O3, TiNをメインに検討を行った。主要な結果は以下の通り。
β-SiAlONにおける成膜では、ガス流量および基板加熱温度の増加にともなって成膜レートが増加する傾向がみられ、いずれの条件においても緻密な膜が形成された。(0001)面が成膜面に10度程度傾いた繊維集合組織が形成された。形成された集合組織は、すでに報告されているサイアロンにおけるすべり系とすべり系の活動度を仮定することにより予測することが可能であった。 ZrB2での成膜においても、ガス流量および基板加熱温度の増加にともなって成膜レートが増加する傾向がみられた。また、細かい篩に粉末をかけると成膜レートの向上がみられた。いずれの成膜条件においても5~10%程度の空孔が見られたが、焼結においても同程度の空孔が見られることを考えると、緻密な膜が形成したと言える。(0001)面が成膜面に概ね垂直となる弱い繊維集合組織の形成が認められた。変形において柱面すべりのみが活動するために上記の集合組織が形成されたと理解している。 TiNでの成膜では、衝突角度およびノズル距離が成膜に与える影響を評価した。成膜レートは基材とノズルが垂直の時が最も高く、平行に近づくほど低下し、50度以下では膜は形成されなかった。また、ノズル距離が大きいほど、成膜レートは低くなった。ノズル距離によらず、膜は緻密であったが。しかし、スクラッチおよび球圧子押し込み試験の結果、ノズル距離を3 mmにて成膜した時の方が20 mmにて成膜した時よりも膜の剥離程度は小さく、健全な膜が形成されたと判断した。
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