研究実績の概要 |
2年度目の本年は以下の実験の実施を予定し,対応する成果を得た. 実験④/Cu粒子を数水準の雰囲気圧力の基に(Cu, SUS, ガラス)各基材上に溶射し,各基材上での遷移圧力と基材熱伝導率等熱物性値との関係性を基に,遷移圧力を決定する基材側因子の影響を明らかにする.ただし,本実験の実施において所有減圧溶射装置のチャンバー内溶射ガンに不具合があり,安定した実験の実施が困難なこと,また正常に動作させるための修理には高額の費用を要することが判明したことから,本実験は断念せざるを得なかった. 実験⑤/(Ni, Ni-10Cr, Ni-20Cr, Ni-30Cr, Ni-40Cr, Ni-50Cr, Cr)溶射粒子を数水準の基材温度の基にSUS基材上に溶射し,得られた各溶射粒子の遷移温度とNi-Cr組成比との関係を整理する.併せて大気中での溶射に伴う粒子表面酸化状態をXPS分析し,表面酸化層形成能の粒子/基材間ぬれ促進への関与の傾向性を把握する.実験の結果,粒子遷移温度がCr含有量の増加に伴い線形的に低下すること,XPS分析の結果,Cr量の増大に伴い粒子表面酸化能も対応して増大すること等が分かった.本来,SUS基材表面は(Fe,Cr)複酸化物層を有することから,Cr量の増大に伴う粒子表面酸化能の増大は,固体酸化物に対する液体酸化物の組み合わせによる粒子/基材間化学的ぬれ性環境の改善を通じ,粒子/基材間動的ぬれの向上をもたらすこと,動的ぬれ改善が溶射粒子の基材表面への接触能の増大をもたらし,これが連鎖的因果関係として,粒子偏平形態の遷移的変化をもたらすこと等の諸点を明らかにした.
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