貴金属元素を共添加したチタン合金をアーク溶解やマグネトロンスパッタリングにより作製し、その化学組成評価および相同定をXRD、EDSを用いて実施した。アーク溶解により作製したチタン合金では貴金属添加量が0.2 at%程度の範囲で調整して作製し、スパッタリングでは3at%まで添加量を変化させてチタン合金を成膜した。本研究で作製したチタン合金はTiに由来するピークのみが検出され単相であった。作製した合金の陽極酸化をNH4FおよびH2Oを含むエチレングリコール電解液中で行った。陽極酸化中に計測した電流は陽極酸化電圧の増加とともに大きくなり、所定の陽極酸化電圧に達したあとの定電圧陽極酸化中では電流は時間の経過とともに減衰し、その後、定常値へと収束する、陽極酸化による多孔質酸化物形成に特有の電流挙動を示した。陽極酸化により形成した酸化被膜の形態は今回検討したチタン合金の多くで、純チタン上に形成するものと同様のナノチューブ状であった。しかしながら貴金属元素の添加量が多い合金ではスポンジ状の酸化被膜が形成した。このスポンジ状酸化被膜を形成したチタン合金では陽極酸化電流が大きいため、その他の貴金属を含まないチタン合金でも見られたように、ナノチューブ状酸化被膜形成条件から外れると考察した。ナノチューブ状酸化被膜を形成したチタン合金において、高電圧で陽極酸化した場合に、貴金属ナノ粒子の担持が酸化被膜全体に観察された。しかしながら、チタン合金中の貴金属元素の担持量が0.1 at%程度では今回の陽極酸化条件では陽極酸化時間中に生じる貴金属元素の濃縮が十分ではなく担持には至らなかった。以上から貴金属元素を含有したチタン合金の陽極酸化により貴金属ナノ粒子が担持したチタニアナノチューブ形成には貴金属含有量および陽極酸化電圧に起因する酸化速度のバランスが重要であることが明らかとなった。
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