研究課題/領域番号 |
18H01755
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
川上 洋司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90305615)
|
研究分担者 |
北村 昌也 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20244634)
中西 猛 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20422074)
辻 幸一 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30241566)
有吉 欽吾 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80381979)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 微生物腐食 / メタ遺伝子解析 / 蛍光X線分析 / 電気化学分析 / バイオフィルム |
研究実績の概要 |
亜鉛めっき炭素鋼管に生じた微生物腐食を対象とし,1)その発生過程を明らかにすること,および,2)亜鉛めっき炭素鋼管に微生物腐食を生じさせるバイオフィルムの菌叢の特長を調べることを目的として研究を進めた. 亜鉛めっき炭素鋼管で生じていると考えられる環境水が流れている好気性環境と流れが停滞している嫌気性環境が30日毎(約1カ月毎)に入れ替わる環境を模擬した浸漬実験を行い,表面に生じた腐食の外観観察や腐食生成物の化学分析や腐食速度の測定を行った. 始めの好気性環境下(0~30日)に腐食速度は約20 mg/dm2/days (mdd)であった.次の期間(31~60日)は嫌気性環境下であったにもかかわらず腐食速度は70 mdd以上と上昇した. 2回目の好気性環境下(61~90日)での腐食速度は約30 mddに低下した.その後,2回目の嫌気性環境下(90~120日)おいては腐食速度は約10 mddまで低下した. 環境水中およびバイオフィルム中の菌叢を比較した結果,Rhodocyclaceae科の細菌がバイオフィルムの形成に大きく関与していると考えられた.Rhodocyclaceae科には嫌気性鉄酸化細菌が含まれている.腐食速度が30-60日の嫌気性環境の期間にRhodocyclaceae科の細菌の割合が増えた.Rhodocyclaceae科には嫌気性の鉄酸化細菌が含まれている.したがって,好気性環境下で作られたバイオフィルム中に生息していたRhodocyclaceae科の細菌が,嫌気性環境下で活性化し,腐食速度の上昇をもたらしたと考えられる.その後,好気性から嫌気性に浸漬環境を入れ替えることで,亜鉛めっき炭素鋼管表面にマグネタイトや亜鉛酸化物からなる被膜が形成され,この被膜によりにより表面が防食されるため,腐食の進行は速くならないと思われる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の目的として,微生物腐食の定量化,および,微生物腐食を生じさせるバイオフィルムの菌叢解析を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の結果,環境が好気性と嫌気性の間を変化することが腐食速度に影響を及ぼすことが明らかになった.そして,腐食速度が速くなる嫌気性環境下においてバイオフィルムの菌叢中においてRhodocyclaceae科の細菌が占める割合が顕著に増加した.これらの結果をふまえ,本年度は微生物腐食を生じさせたRhodocyclaceae科の腐食性細菌の単離と同定を行うことを目的の一つとする.そして,単離された細菌が亜鉛メッキ鋼管を腐食させる化学的作用を調べる. バイオフィルム中の化学種の濃度分布の経時測定も目指す.測定の対象とする化学種は試験片より溶出してくるであろう各金属イオンや微生物腐食で著名な金属腐食性を有する化学種の他,単離された腐食性細菌の代謝産物により生成する化学種を対象とする.測定には電気化学的手法とX線蛍光分析を予定している. これらの結果を統合することにより,本年度に得られた腐食の経時変化の速度論的解釈を行うことを目指す.
|